研究課題/領域番号 |
25610139
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹広 真一 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (30274426)
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研究分担者 |
山田 道夫 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90166736)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 核マントル境界 / 安定成層 / アルフベン波 / 貫入距離 / 内核外核相互作用 |
研究実績の概要 |
平成 26 年度は, 外核中の磁気流体ダイナモ解の多様性の要因の一つである上部境界直下の安定成層の存在の影響を調べることを行った. この安定成層は内核外核の相互作用の結果として生じるとも考えられている. すなわち, 惑星全体の永年冷却にともない内核外核境界において外核側に放出される軽元素が上昇し上部境界附近に蓄積することにより形成されていると推測されている. まず, 半無限平面領域で安定成層している一様磁場にさらされた回転ブシネスク磁気流体の振舞いを理論的に考察した. 安定成層が十分に強い近似を施すことにより, 下面境界からの渦運動に対して流体運動は慣性重力波に対応する速いモードとアルフベン波に対応する遅いモードの 2 つに分類されることを示した, このうち, より遠くまで安定成層中を伝播可能な遅いモードの成層中への貫入距離の解析的表現を提示した. この結果を踏まえて, 回転球殻中の磁気熱対流の中立モードをの構造を計算し, それらの構造と解析的に求められた貫入距離を比較し整合的な結果を得ることができた. その結果を地球の状況と先行研究のダイナモ計算に適用し, 安定成層を十分に貫く磁気流体擾乱が存在しうることを議論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成 26 年度の計画は, 平成 25 年度に構築したモデルの正しさを確かめるための数値実験を実行する予定であったが, 内核外核相互作用の結果の一つである安定成層の外核中の磁気流体ダイナモに対する影響を調べることに時間を費してしまい, モデルの検証実験を進めることができなかった. しかしながら, ダイナモ解に対する内核外核相互作用の素過程の影響の一つを解析的に調べることができたことは意義深いと自負している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成 25 年度に構築したモデルの正しさを確かめるための数値実験を実行する. 内核部分のモデルのチェックには理論的に計算した外核内の磁場に対する内核の応答問題の解を用いる. 理論的考察で用いた磁場分布に外核の状態を固定し, 内核部分の流れ場温度場および磁場の時間発展を計算し, 定常解が解析解と一致することを確かめる. 一方で, 外核部分のモデルチェックには, 内球を剛体球としているダイナモベンチマークの CASE2 の解を用いる. 内球での温度を一定に固定し, 粘性率を次第に大きくしていくことにより内球の状態を剛体球に近づけることで, ベンチマークの解に近づくかどうかチェックする. 数値モデルのチェックを行った後に, 系統的な大規模数値実験を開始する. 数値実験の結果の比較のためのベースとなる解として内核を剛体球としているダイナモベンチマークの CASE2 を外核の基本的状態として用いる. 主として内核の粘性率・熱拡散率などの物性パラメターを変化させたときの内核と外核内の状態の変化を調べていく. 特に注目する点として以下の項目があげられる. 地震波の観測から内核内の結晶構造の異方性と内核内の流体運動のパターンと強度が推定されている. したがって, 内核内部の流れの強さとパターンのパラメター依存性を調べることは地球科学的にも興味ある点である. また, 地震波の観測から内核が 0.3度/年 で自転より速く回転していることが示唆されている. その回転の生成メカニズムと回転角速度のパラメター依存性を調べることは興味深い.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度未使用額がほぼそのまま継続して残ったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用分は論文投稿時の費用ならびに国内外の学会発表として使用する予定である。
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