研究課題/領域番号 |
25610141
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
磯辺 篤彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (00281189)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バルーン空撮 / 熱赤外画像 / 沿岸海洋前線 |
研究概要 |
本研究では、観測船から高度100-200m程度で曳行するバルーンにデジタルカメラや熱赤外カメラを装着し、海面の海洋微細構造を計量するシステム開発に取り組んでいる。まず、既存のバルーン観測データを利用して、撮影した画像データを直交デカルト座標系に補正する幾何補正の技術や、あるいは色空間における色差を利用することで、特定のターゲットを自動抽出する画像処理を確立した.研究成果を、日本リモートセンシング学会誌における査読付英文論文として公表した。つづいて、2013年の8月に瀬戸内海において、サーモグラフィ搭載のバルーンを調査船で曳行し、水平規模が10 m 以下の微細渦(水温の パッチネス構造)が密に分布する沿岸域の実態を可視化した。また、微細渦の前線周辺での生成や、それ以降の 移動や消滅に至る一連の時間発展を追跡した。これらは、バルーン搭載の熱赤外リモートセンシング技術を沿岸海洋の観測 に初めて導入することで、沿岸海洋において、微細渦が、水塊混合過程や熱輸送過、あるいは栄養塩供給過程と して機能しているか否かを精査する試みである。そして、確かに可視化された海表面水温から、暖水と冷水が接する沿岸海洋前線(フロント)の形成が確認された。さらに、フロントには、混合域から成層域へと伸びる冷水の舌状構造が存在していることを確認した。なお、本観測で使用したカメラは、可視画像と熱赤外画像を同時に撮影することができ、可視画像から抜き出した集積物の位置と海表面水温との比較がを行うことも可能であった。そして、海面の漂流物が、確かに水温の急変するフロント部に添って分布していることを確認した。一連の成果を、日本海洋学会2014年春季大会にて口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画において初年度に予定された現地観測が滞り無く行われた。やはり当初予定の通りに、熱赤外画像のバルーン空撮が、沿岸海洋前線の微細海洋構造を観察・計量する有効な手法であることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施した熱赤外画像のバルーン空撮において、その撮影範囲の狭さが課題として残された。現状の撮影技術では、解像度を犠牲にすることなしに観測できる範囲は20m四方で、これは沿岸海洋過程といえども、いかにも狭すぎるものであった。数百m四方程度の観測範囲が実現できるように、次年度は、バルーンに傾斜計を取り付け、このデータを利用することで画像の幾何補正を速やかに行う現地調査を計画している。これによって、調査船を移動させて撮影を繰り返すことで、広範な観測領域を確保できる見込みである。
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