研究実績の概要 |
船舶曳航式のバルーンに搭載した熱赤外カメラを用いて、瀬戸内海伊予灘と福岡県北部の玄界灘において沿岸前線を空撮する低高度リモートセンシング実験を実施した。瀬戸内海での観測は、2013年8月20日に、瀬戸内海の伊予灘に形成された潮汐フロント周辺で実施した。最初に愛媛大調査船「いさな」から目視で筋状に集積したゴミや泡を確認し、漂流物の筋を直交するように測点を約100m間隔で11点設けた。そして各測点においてCTD観測を実施した。得られたデータから作成した水温・塩分鉛直断面図から、観測時におけるフロント形成を確認した。次に、漂流物周辺にGPSを装着したブイ(以降、GPSブイ)を24個投入した。そして、ヘリウムガスを充填したバルーン底部にサーモグラフィカメラ(Thermo shot F30;日本アビオニクス株式会社)を装着し、これを観測船から揚げて、GPSブイと漂流物が共に写るように遠隔操作でカメラアングルを調整しつつ、高度約200mから複数枚の海面赤外画像を撮影した。ここでGPSブイは、空撮写真を直交デカルト座標系上に再配置する幾何補正(射影変換;Magome et al., 2007)のために利用した。また、調査船による海表面水温の観測を空撮と同時に実施し、サーモグラフィカメラによって観測された水温データを検証した。玄界灘の観測は、九州大学応用力学研究所の「だんりゅう」を用いて、2014年9月9日に玄界灘に形成される潮汐フロント周辺で実施した。実施手順や内容は前年の瀬戸内海における実験と同様である。特に2014年の実験では、カメラに傾斜センサーを取り付け幾何補正を効率化した。大気中の水蒸気での赤外線減衰による誤差補正も行うことで、解像度が数m程度の高解像度で前線構造を明瞭に捉えることに成功した。成果を取りまとめ、日本海洋学会春季大会沿岸海洋シンポジウムで公表した。
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