研究課題/領域番号 |
25610143
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
浅川 賢一 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, シニアスタッフ (40344288)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光塩分センサ / 海洋 / ヘテロダイン干渉計 / ダブルパス干渉計 |
研究実績の概要 |
海洋の水温や塩分分布などの環境変動は、地球環境変動に大きな影響を与えることが知られている。従来塩分は電気電導度を測定して求めてきた。この電気電導度センサは、十分な精度と分解能が得られており、低消費電力化も進んでいるものの、長期的な安定性は不十分で、毎年の校正が必要である。そのため、海洋環境観測用のブイシステムでは、毎年メインテナンスのために大型観測船の航海が必要とされている。観測コストを下げて観測箇所を拡大し、より高密度の観測網を実現するためには、より高い長期的安定度を持つ塩分センサを実現する必要がある。 一方、屈折率と塩分の間には、ローレンツ・ローレンツの式で表される直接的な関係があることが知られている。そのため、屈折率を用いた塩分測定が新しい測定方法として注目されている。本研究では半導体レーザと音響/光周波数変換器を組み合わせたヘテロダイン光源とダブルパス・ヘテロダイン干渉計を用いて、塩分の測定を行い、電気電導度センサ以上の高い測定分解能と短期的・長期的安定性が実現できることを実証することを目的とする。 本年度は、まず半導体レーザ光源を用いたヘテロダイン光源を作成した。次に、測定用光を2台の光検知器で電気信号に変換し同期検波を行った。このうち1台の光検知器に入射する光信号は、干渉計に入射する前の光を取り出したため、干渉計出力光強度が低下して測定精度が劣化することが明らかになった。そこで、光信号を取り出さずに電気的に参照信号を作成し、ヘテロダイン光源のビート周波数安定度の評価を試みた。しかし、ビート信号の検出は行えたものの、安定した位相差の検出までには至っていない。現在、その原因の分析と対策の検討を進めている。ヘテロダイン光源の出力光パワーが予想より低いため、その原因の分析と対策の検討を進めている。また、ダブルパス干渉計用のセルを作成して、実験の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前述したように、現在までにヘテロダイン信号を作成するための信号源と、その信号源のビート信号の周波数と位相安定度を評価するためのビート信号検出器を作成し、実験を開始した。しかし、まだ塩水の屈折率差の測定までには至っていない。その原因は、1.ビート信号の検出は行えたものの、安定した位相差の検出ができないこと、2.ヘテロダイン光源の出力光パワーが予想より低く、見地信号に十分なS/N が得られないこと、にある。これらの根本原因としては、半導体レーザへの戻り光のため、位相がホップすることが考えられる。また、光ファイバコネクタの端面の汚れ、結合軸のずれ、などが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、まず上述の原因を分析し、その対策を検討する。方法として、まず、半導体光源の偏波安定度を測定する。また、偏波保存光ファイバを通した後の偏波安定度を測定する。さらに、光コネクタの端面の洗浄とマイクロスコープによる検査、結合損失の評価、結合による偏波面の変化、音響/光周波数変換器の出力光パワーと偏光状態の安定度とその位相差測定への影響など、基本的なチェックを行う。 それでも根本的な改善が行えない場合には、光源としてゼーマン効果を用いたHe-Neレーザを用いてダブルパスヘテロダイン干渉計の実験を進める。この場合、半導体レーザに比較して装置が大型になるが、光ファイバコネクタの問題や、音響/光周波数変換器による光パワーの低下などの問題が回避される。 研究成果は国内および国外での研究集会で報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定用光を2台の光検知器で電気信号に変換し同期検波を行った。このうち1台の光検知器に入射する光信号は、干渉計に入射する前の光の一部を取り出して参照信号としたため、干渉計出力光強度が低下して測定精度が劣化することが明らかになった。そこで、光信号を取り出さずに電気的に参照信号を作成したため、これに時間を要し、その後予定した測定精度の評価が遅れ、国際会議等での成果の報告ができず、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
電気的に新たに作成した検波用参照信号を用いて即手精度の評価を継続し、国内および国際会議で成果発表を行うこととし、未使用額はその経費にあてることとしたい。
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