海洋の水温や塩分分布などの環境変動は、地球環境変動に大きな影響を与えることが知られている。従来塩分は電気電導度を測定して求めてきた。この電気電導度センサは、十分な精度と分解能が得られており、低消費電力化も進んでいるものの、長期的な安定性は不十分で、毎年の校正が必要である。そのため、海洋環境観測用のブイシステムでは、毎年メインテナンスのために大型観測船の航海が必要とされている。観測コストを下げて観測箇所を拡大し、より高密度の観測網を実現するためには、より高い長期的安定度を持つ塩分センサを実現する必要がある。 一方、屈折率と塩分の間には、ローレンツ・ローレンツの式で表される直接的な関係があることが知られている。そのため、屈折率を用いた塩分測定が新しい測定方法として注目されている。本研究では半導体レーザと音響/光周波数変換器を組み合わせたヘテロダイン光源とダブルパス・ヘテロダイン干渉計を用いて、塩分の測定を行い、電気電導度センサ以上の高い測定分解能と短期的・長期的安定性が実現できることを実証することを目的としている。半導体光源を用いることにより、安定したヘテロダイン光源を取り出すことが期待できる。 本研究では、まず、このヘテロダイン光源の一部を干渉計に入射する前に取り出して参照信号として検出し、干渉計出力光のヘテロダイン検波を行った。しかし、参照信号を取り出したため干渉計の出力光強度が低下し、測定精度が劣化することが明らかになった。そこで、光信号を取り出さずに電気的に参照信号を作り、ヘロダイン検波を行った。その結果、信号光強度は改善されたものの、安定したヘロダイン検波を行うまでには至っていない。その原因を分析したところ、検波を行うロックインアンプに問題があることが明らかになった。今後、ロックインアンプを用いず、パソコンを利用したヘロダイン検波を試みる予定である。
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