前年度に開発した6次元ブラソフコードの高速化を行った。より並列度を上げた計算にも対応させるため、これまでは実空間のみをMPI並列していたのを、速度空間にもMPI並列するようにプログラムを書き換えた。また実空間の移流計算において、6次元分布関数のデータの並びを速度-位置から位置-速度に転置することにより、これまでの5次元コードで用いていた手法に比べて計算時間を短縮化し、かつ使用メモリ量を大幅に削減できることが分かった。また、データの並びの転置においても、スレッド並列をうまく用いることにより高速化できることが分かった。以上により、インテル系Xeonプロセッサにおいては、前年度に開発したコードよりも大幅に性能向上でき、トータルの計算時間で従来の5次元コードとほぼ同等の実効効率を達成した。一方で、富士通FX10及び京コンピュータにおいては、従来の5次元コードに比べて1割ほど実効効率が落ちたため、今後更なるチューニングを施す必要がある。 また、京コンピュータにおいて実行した弱磁化小天体の超高解像度ブラソフシミュレーション結果を解析した。誘電性小天体の表面へのプラズマの帯電によって強い電場が発生し、それが閉じた磁力線に沿って現れることを示した。しかしこの強い磁場は、磁気圏構造そのものにはほとんど影響を与えないことを明らかにした。さらに、閉じた磁力線の領域において電子スケールのプラズマ波動が励起している様子も見られ、今度更なる解析を行う必要がある。
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