研究課題
前年度に引き続き、南極昭和基地大型大気レーダー(南緯69度)を使用した多チャンネル流星観測手法開発を行った。最終的に使用可能予定の全55系統の内、12系統を使用した試験観測に成功し、数度にわたり短時間の試験データを取得した。受信信号を位相合成することで、観測後にオフラインで受信ビームを走査してエコーを検出するアルゴリズム開発に成功した。観測後に多チャンネルの信号を合成する事により、単独のチャンネルではほとんど検出不能な微弱な流星エコーがチャンネル数倍のエコー強度となって多数検出可能となり、中間圏界面高度の風速観測に利用できるようになる点が本手法の特長である。これを受けた55群フルシステムを使った試験の実現に向けて、大型大気レーダーの細かな制御ソフトウェア調整を昭和基地の隊員と連絡を取ながら進めた。2014年11月に出発した第56次南極地域観測隊により、大型大気レーダーは2015年2月に全55系統の設置調整が概ね終了し、フルシステムを使用した試験を行うハードウェア準備はようやく整ったが、これまでにない55系統という多チャンネルでの流星観測には制御ソフトウェア調整にもうしばらくの時間を要するため、フルシステムによる流星観測の試験はH26年度中には実現しなかった。この状況を鑑みて1年間の計画延長を行い、H27年度にフルシステムを使った試験を実施して本研究成果のとりまとめを行う方針である。
3: やや遅れている
全システムである55系統の内、流星観測を実施できているのは12系統のみである。これは、南極の厳しい海氷状況のために、観測船しらせが2011/2012および2012/2013の2シーズン連続で昭和基地に接岸できず物資や燃料の輸送に遅れが生じたこと、それに伴う大型レーダーの整備の遅れが生じたことに起因する。前値度末に大型レーダーはハードウェア的にはフルシステムの整備がほぼ終了し、現在は多チャンネルシステム運用に向けたソフトウェア調整を進めている状況である。
昨年度末にようやく全システムのハードウェア調整がほぼ終了したことを受けて、一部のソフトウェア整備を行いながら全システム55系統を使用した多チャンネル流星エコー試験観測を実施する。得られた成果をまとめて学会などで発表するとともに、開発結果をさらに発展させた大型大気レーダーによる流星観測手法実用化の準備を行う。
主に厳しい海氷状況のために、南極観測船しらせが2011/2012および2012/2013に昭和基地接岸断念となって物資輸送に支障が生じ、大型大気レーダー整備計画に遅れが生じたことに起因する。2014年度末にレーダーの全ハードウェア整備が概ね終了したが、本研究が当初より目指した全システムを用いた流星エコーの試験観測は実施できずH27年度に全システムによる試験を実施することとしため、その成果発表などのための資金を必要としたことによる。
早期に全システムである55系統による試験観測を実施し、その成果を国内外での学会などで発表する際の旅費などに使用する。さらに、多チャンネル流星観測の実用化に向けた準備を行う。
南極昭和基地大型大気レーダーの開発に関する成果により、本研究代表者を含む4名の研究者が、下記の表彰を受けた。2014年4月 文部科学賞 平成26年度 文部科学大臣表彰 科学技術賞 開発部門 南極大型大気レーダーの開発 (受賞者: 佐藤薫、佐藤亨、堤雅基、西村耕司)
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Monthly Weather Review
巻: 143 ページ: 1804-1821
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http://pansy.eps.s.u-tokyo.ac.jp/