研究課題/領域番号 |
25610148
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小宮 剛 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30361786)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エディアカラ紀 / カンブリア紀 / 三次元構造解析 / 初期後生動物進化 / カンブリア爆発 / SPring-8 / 放射光X線Micro-CT |
研究実績の概要 |
南中国貴州省の瓮会、五河、瓮安にて、エディアカラ紀の地層の地質調査と岩石試料採取を行った。瓮会では主にエディアカラ紀の藻類化石の採取、瓮安では後生動物の胚化石に着目し、黒色頁岩やリン酸塩岩の試料採取を行った。五河では当時の大陸斜面に堆積した堆積物をクリオジェニアン紀の南沱層からカンブリア紀のニュウチタン層まで、系統的に採取した。 瓮安のリン酸塩岩から後生動物胚化石の分離を行った。 瓮安地域のドウシャンツオ累層の中部(エディアカラ紀中期)から海綿動物のgemmuleを発見した。これまでの最古の海綿動物のgemmuleは白亜紀までだったので大幅な更新となる。また、従来の海綿動物の最古の証拠は、バイオマーカーなど不明確なものを除くと、エディアカラ紀後期までしか遡れない。本研究は、最古の海綿動物の明確な証拠を提供する。 五河とユアンリンに存在する、当時の大陸斜面や海盆地域に堆積した堆積物中の有機炭質物の窒素と炭素同位体の分析を行なった。その結果、窒素同位体は、浅海と調和的な変動を示すことから、示準化石の存在しないエディアカラ紀で有用な時間軸を与えることを示した。エディアカラ紀の海洋は、浅海のみならず、遠洋域でも硝酸に枯渇していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
貴州省瓮安地域のドウシャンツオ累層のエディアカラ紀中期の地層から動物卵や胚化石を多く発見することができた。また、陝西省の寛川溝累層のカンブリア紀地層から動物胚や幼生化石を多数発見することができた。これらの保存の良い化石は、次年度に放射光X線Micro-CT解析を進める上で極めて重要で、その化石を多く発見できたことは今後の研究の進展にとても有用である。 また、貴州省瓮安地域のドウシャンツオ累層から最古の海綿動物gemmuleを発見した。これまで最古の海綿動物の証拠とされたバイオマーカー化石が、近年原核生物でも見られることが指摘されたため、このgemmule化石が最古の海綿動物の証拠となる。 本研究によって、初めて、エディアカラ紀の遠洋域の窒素同位体変動が得られた。その結果、これまで不可能とされたエディアカラ紀の遠洋堆積物に時間軸を入れることに成功した。その成果は今後のエディアカラ紀の海洋組成変動の研究に重要な貢献となるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、 これまでに分離、収集したカンブリア紀初期やエディアカラ紀の微化石(後生動物の卵、胚や幼生化石)の三次元像解析を行う。6月には、SPring-8において、それらの放射光X線Micro-CT像を撮像する。また、東北大学においても、それらの化石のMicro-CT像を撮像する予定である。 得られた三次元像解析データをもとに、後生動物の初期進化について考察し、国際誌に報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、4~5月に南中国で地質調査と岩石試料採取を行い、化石を多く含む大量の試料を収集した。それらの化石試料から、化石を分離することに集中した。その結果、たくさんの胚化石や幼生化石を発見することができた。加えて、最古の海綿動物のgemmuleも発見することができた。 また、遠洋域の堆積物に時間軸を入れる必要があるため、その調査で採取した遠洋域の堆積物の窒素同位体分析に集中した。 結果として、Micro-CT像解析を行う時間が減り、東北大学やSPring-8に行く旅費が当初予定より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年度に収集した化石のMicro-CT像解析を、東北大学やSPring-8で行う。その化石分離のための化学薬品の購入費や東北大学やSPring-8に行く旅費に多くが費やされる予定である。
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