本研究では、大地震へと発展するシステムの不安定挙動への準備は、まずシステムの中での剪断面の選択と集中から始まると仮定し、歪軟化準備過程において観測可能な現象を板状の岩塩を模擬岩体とし、平面歪試験の結果から提言することである。初年度(平成26年度)は①平面歪試験機を作成し、また②試料である岩塩の性質を調べた。今年度は①の平面歪試験機を用いて岩塩平板の変形実験を実施し、観察に適した変形条件を割り出すことができた。②については昨年度ユトレヒト大学で実施した岩塩の変形速度に対する強度・摩擦特性・変形組織について引き続き解析を行った。
①平面歪試験を用いて岩塩平板の変形実験をおこなった。最初は観察適した実験条件を探ることから始まった。また、変形の様子を撮影し、剪断面の発達と集中の過程を対応させた。11kN程度の荷重により5時間ほどで1次クリープから定常クリープ、3次クリープへと変形の加速が観察された。変形組織もポリゴン状の剪断網が発達したのちに縦方向の破断面が最終的に形成される様子を変形の加速と対応させて観察することができた。
②岩塩の変形速度に対する強度や摩擦特性、変形組織などの変遷について、安定した変形から、変形集中をへて、高速剪断すべりへとシステムのスイッチングが起こるとき、変形組織はどう変遷するのかについて考察することができる解析結果を得た。昨年度の実験で十分にマチュアなマイロナイト組織の発達がなされた変形条件(低速度・長時間変形)を経た後、高速剪断を強制的に加えても、マイロナイト組織はほとんど破壊されず、試料境界面での変形集中が観察された。またマイロナイト組織の発達に伴い真の接触面積が増大するためか、高速領域への速度変化に対し異常なほど大きな摩擦の直接効果が表れた。
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