高温高圧下での液体の粘度測定には,落球法が用いられてきた.試料急冷法での落球実験では,まず,容器上部に白金などの高密度球を装填しておく.続いて融点以上の温度での保持時間を変えた複数の高温高圧実験を行い,それぞれの持続時間でどの位置まで球が落下しているかを回収試料で調べる.このため,一つの温度・圧力条件で粘度を得るためには,複数回の実験が必要である.一方,放射光を用いるX線イメージング落球法では,球の落下をX線ラジオグラフィーでその場観察する.このため,試料急冷法とは異なり,一度の実験で粘度を測定できる.また,急冷法よりも低粘度の液体で測定が可能である.しかしながら,一度の実験で粘度を測定できるとはいえ,高温高圧下での測定には,加圧・減圧にそれぞれ数時間以上を要する.すなわち,充分な成果を得るには何日ものビームタイムを要することになる.昨今,放射光の運転時間が大幅に削減されている中で,益々ビームタイムは貴重になっており,一度の高温高圧実験において複数の温度・圧力条件での粘度測定値を得られるように技術開発を行うことは極めて重要である. そこで本研究課題では,高温高圧下での粘度測定を複数回可能にするための装置開発を行った.具体的には,上下反転ができる回転ステージに小型高圧発生装置を取り付けた.このことにより,一度落球粘度測定を行って容器底部に白金球が達しても,装置ごと上下を反転させれば,再び落球を観察できるようになった.この装置を用い,今年度はDaphne7373オイルなどを試料に用い,温度・圧力を変えて粘度測定を行った.その結果,粘度の温度依存性と圧力依存性を求めることが出来た.
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