研究課題
挑戦的萌芽研究
一ノ目潟マール産の下部地殻角閃岩・最上部マントルレールゾライト、およびスペイン・Girona産のレールゾライトの代表的試料数個について以下1~5の作業を行った。1.岩石薄片の観察・EPMA 分析: XGTによる鉱物モード組成の測定と偏光顕微鏡観察に基づく岩型分類・部分溶融の判別を行った後、EPMAによる鉱物組成分析を行い、複輝石温度計を用いて捕獲岩が由来した場所の温度圧力条件(温度1140~1210 ℃)、圧力(0.9~1.2 GPa)を推定した。2.バルク捕獲岩試料の処理・X線CT撮影により、空隙の体積分率・形状(楕円体近似)・連結度を求めた。そこから、Takei(2002, JGR) の理論に基づき、地震波の縦波と横波速度の低下率の比 dlnVp/dlnVs を求め、東北日本弧の下部地殻・最上部マントルの地震波トモグラフィー観測との比較を行った。その結果、背弧側においては、岩相がそれぞれ角閃石斑レイ岩・かんらん岩として矛盾はないが、脊梁部には一部部分溶融を想定しないと(間隙水の存在だけでは)説明できないデータが存在した。3. 高電圧パルス衝撃波処理: 通常は年代測定用の鉱物分離のために用いられるSelfrag 装置(海洋研究開発機構)を鉱物粒子の表面観察に応用した。微小試料処理用のマイクロベッセルの改良を行った。4.粒子を分離した後、その表面微細形態を、SEM~微分干渉顕微鏡を用いて多段階スケールで観察した。5.遊離結晶の表面観察・分析:分離した結晶をカバーガラス上にドータイトで固定し、デジタルマイクロスコープ・低真空走査電子顕微鏡・微分干渉顕微鏡を用いて観察を行った。
2: おおむね順調に進展している
多数の捕獲岩試料を入手し、40試料以上についてX線CT撮影を行うとともに、各6試料以上のかんらん岩・角閃石ハンレイ岩捕獲岩について、詳細な記載岩石学的な特徴と熱史を掴むことができた。また複数の捕獲岩の詳細な表面観察によって、高温高圧下において流体と共存していた証拠を掴むことができた。これらの結果の一部は鉱物科学会において発表を行った。
対象とする岩石種と産地を広げるとともに、表面観察を進める。コヒーレントな粒界は、落斜型微分干渉顕微鏡を用いて表面微細形態を観察し、溶液成長を示す特徴の有無から、薄膜水(厚さ数十nm)が存在していた可能性を検討する。また間隙流体に接していた面の微細形態から、流体(溶液)中の結晶成分の過飽和度・不飽和度を推定し、拡散境界層の厚さを求める。そこに流体中の拡散係数を用いて流体の流速を制約する。次に、岩石粒界の地球化学的役割を調べるため、EPMA分析によって微量元素の粒界~結晶リム部分での偏析・濃集を調べる。
購入を予定していた一部の消耗品について、他経費で購入することができたため、使用額が予定額を下回った。今年度はX線CT消耗品・データ解析用計算機周辺機器等に使用する予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
岩石鉱物科学
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Journal of the Geological Society of Japan
巻: in press ページ: in press
in press
ELEMENTS
Contributions to Mineralogy and Petrology
巻: 166 ページ: 1285-1304
10.1007/s00410-013-0926-x
Earth and Planetary Science Letters
巻: 377-378 ページ: 106-113
10.1016/j.epsl.2013.06.031
Island Arc
巻: 22 ページ: 382-394
10.1111/iar.12038