研究課題/領域番号 |
25610154
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 美千彦 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70260528)
|
研究分担者 |
奥村 聡 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40532213)
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部 鉱物科学研究グループ, 研究員 (70359206)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 地球惑星物質 / 岩石粒界 / 結晶成長 / X線CT |
研究実績の概要 |
H25年度の結果を踏まえ、対象とする岩石種と産地を広げるとともに、表面観察を高度化した。捕獲岩試料は、新たにEifel, Moses Rocks,San Carlos, Bullen-merri, Lanzarote Island, 一の目潟 などの産地のものを追加し、H25年度と同様に一連の作業を行った。X線CT撮影の結果と薄片観察から、部分溶融の有無を判別し、また結晶表面の観察から、風化面と、コヒーレントな粒界であった新鮮な面とを区別した。その結果、Bullen-merri, Lanzarote Island, 一の目潟産の、部分溶融をほとんど経験していない捕獲岩の新鮮な粒界面から、孤立したレンズ状流体の痕跡であるdimple構造を結晶表面に発見した。さらに、それらが組織平衡形状をとっていると考えられることから、視差測定を利用した三次元形状測定用走査型電子顕微鏡を用いて、二面角を定量化した。二面角はいずれも60度より大きく、Lanzarote Islandで最も小さく、Bullen-merriで最も高い値となった。この二面角の値から、さらにマントルでの流体組成に制約を与えるために、捕獲岩の温度圧力条件の推定をPutirka (2008)の輝石温度圧力計を用いて行った。その結果、流体組成は、ほぼ純粋な水(Lanzarote, 一の目潟)から、非常にCO2に富む組成(Bullen-merri)まで幅があり、これらがテクトニックと調和的であることがわかった。これはマントル中に存在していたと考えられる粒間流体組成に関する初めての直接的データである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
捕獲岩鉱物粒界の中で、高温高圧状態での微細構造を識別するルーチンを確立した。マントル捕獲岩中では、下部地殻捕獲岩とは異なり成長丘など通常の流体-鉱物界面で見られる微細構造は確認されなかった一方で、孤立したレンズ状流体の痕跡を発見した。さらにその二面角を三次元的に測定し、鉱物学的な温度圧力の推定値とあわせて、世界で初めて包有物でない粒間流体組成に制約を与えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
H26年度に、粒界にレンズ状に孤立して存在していた流体の形状(二面角)がマントル捕獲岩の産地によって異なり、さらに、鉱物学的な温度圧力の推定値と合わせることで、流体組成が推定できることが明らかになった。これは極めて重要な発見と考えられるので、H27年度は、まずこの内容での論文投稿を進める。鉱物表面の微細構造については、マントル捕獲岩よりも明瞭にステップなどが保存されている下部地殻の岩石についてのCT撮影と岩石記載を進める。また新たに、活火山(阿蘇中岳)から噴出した直後の結晶を入手したので、その表面観察も行う。これは雨などの地表水に全く触れていない貴重なサンプルであり、メルト中での結晶表面のナノメートルスケールでの微細構造を保持していると考えられるため、メルト中での鉱物(斜長石・輝石・磁鉄鉱)の結晶成長機構が明らかにできる可能性がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた一部の消耗品について、他経費で購入することができたため、使用額が予定額を下回った。
|
次年度使用額の使用計画 |
学会発表のための旅費、X線CTデータ解析や論文執筆のためのPC関係物品費に使用の予定。
|