研究課題
挑戦的萌芽研究
H25年度は、5月のハドロンの事故以来H25年中はJ-PARCは閉鎖され、実験を行うビームラインのある建物は閉鎖されていたため、この期間のJ-PARCでの研究は不可能であった。幸い、年度初めに少しスリットサイズや測定時間、及びカメラ感度を変えた撮影をしていたため、そのデータを用いて画像解析・検討を試みた。また試作中性子グリッドを用いた撮影も行い、その有効性についても調べた。中性子イメージングの性質上、被写体をカメラ感光面から離せば離すほどどうしても中性子の発散による画像のぼやけが見られるが、そのぼやけを入射スリットや受光スリットの条件を最適化することにより、かなりの程度までぼやけを抑制することができた。中性子グリッドの効用は、グリッドを被写体とカメラ感光面の間に入れることによって中性子の発散が抑制されることを期待したが、グリッドにより中性子フラックスが少なくなる影響の方が大きく、非常に有効な効果が得られたという結論までには至らなかった。この際のビーム強度は300 kW程度であり、将来的にはこの3倍以上の1 MWで運転されるためその有用性を否定するものではないが、検討を要する結果となった。ハドロンの事故後、再稼働はH26年に入ってからになり、H26年3月にビームタイムをいただいて再度J-PARCで中性子イメージングの実験を行った。この際は高圧下でのケイ酸塩と鉄水素系のイメージングを試みたが、両者のコントラストの違いが余りなかったために明瞭なイメージングを収集することはできなかった。今後、画像処理等を通じて更なる検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に書いたように、H25年度は5月のハドロンの事故以来半年以上の間J-PARCは閉鎖され、結局年度初めと年度終わりにいただいたビームタイムを有効に利用し研究を遂行した。幸い、年度初めに系統的なデータ収集を行っていたため、その実験データを用いて各種検討を行うことができた。試作中性子グリッドも日本原子力研究所の研究者から借用でき、早い段階でその効用をチェックできたことは大きかった。現在の中性子フラックスから考えると、グリッドでフラックスを落とすよりかは入射スリット・受光スリットサイズを調整して発散を抑制して行く方が現実的なようである。但し、今後中性子フラックスが増えて行くに従って、中性子グリッドの有効性は増して行くものと考える。このように今後、高温高圧下のイメージングを行っていく上で、方向性を立てるデータ収集を行うことができ、試作中性子グリッドでその効用もチェックできたことから、十分とは言えないがおおむね計画通りに研究は遂行できていると考える。
上述のように昨年度はJ-PARCの長期にわたる閉鎖のため、十分な実験が遂行できたとは言い難く、今後は、さらにスリットサイズや測定時間、及びカメラ感度を変えた系統的な実験を行い、さらに最適化して行く必要がある。また近年、画像処理技術の向上は著しく、ソフト的にデコンボリューションすることにより、より鮮明な画像の構築も考える。この件は現在、ある企業の研究者と打合せをしながら、その方向性を模索している。そして、今年度は実際に高温高圧下での含水マグマのイメージング実験を遂行する。その高圧セルの予備実験を現在までに愛媛大学や高エネルギー加速器研究機構(KEK)で行ってきている。本番に向けてセルの改良をさらに加えつつ、世界で初めての高温高圧下での含水マグマの中性子イメージング実験を行う。
ハドロンの事故により、半年以上の期間実験が不可能になったことより、中性子グリッドの作成を控えることにしたため。年度初めに行った予備実験からは中性子グリッドの効用が顕著であるという結果は見いだせていないので、更なる検討が必要と言うことで今年度は控えることにした。今年度の実験次第で中性子グリッドの作成を考えるが、費用がかなりかかることから慎重に考える。その分、画像処理を積極的に進めることにより、その方面への使用に向ける。
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