研究課題
珪酸塩メルト中の硫黄の価数は非常に狭い酸素雰囲気の範囲で2-から6+に急激に変わるのでマグマの酸素雰囲気の良い指標になるが、その研究例はごく僅かである。適切な試料を用いないと脱ガスや結晶分化の影響により元のマグマの酸化還元状態を保持していない可能性がある。本研究では放射光施設(SPring-8)で、硫黄の価数の割合を求める分析条件を見出し、すでに濃度や硫黄同位体比を記載している島弧火山岩に含まれるクロムスピネル中の未脱ガスで初生的な情報を保持するメルト包有物を分析して現在も論争中である島弧下マントルの酸化還元状態を見積もることを目的とする。補助事業期間中に世界で唯一高輝度で微量な硫黄の化学状態の局所分析可能なビームライン(Spring-8 BL27SU)のビームタイムを合計250時間以上獲得し、ボニナイトと島弧ソレアイトに含まれるクロムスピネル中のメルト包有物を分析した。同時に測定した中央海嶺玄武岩ガラス、海台・海山の玄武岩ガラスの全硫黄に対する6価硫黄の割合と較べ、沈み込み帯の火山岩のそれらは極めて高く、酸化的であったことが示唆された。その結果、ウェッジマントルは酸化的であることを明らかにし、最近注目されている説(島弧マグマの酸素分圧は一般的な上部マントルのものと変わらず、結晶分化に伴い酸化的になるという説で例えばLee et al., Science, 2012)を覆した。さらに沈み込み帯の形成最初期の前弧玄武岩ガラスでは通常の上部マントルよりもやや酸化的であることがわかり、沈み込み帯形成から時間と共にウェッジマントルの酸素分圧が増加しているという変遷を見出せた。マントルの酸素分圧を見積もるのに非常に有効な手法であることを示し、測定・解析法も確立したので共同研究として火星隕石にも応用している。
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The Origin Evolution, and Environmental Impact of Oceanic Large igneous Provinces, Geological Society of America Special Paper
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