地球内部の酸化還元状態は物性や元素の挙動に大きな影響を及ぼす。表層物質が地球内部へと供給される唯一の場である沈み込み帯近傍のマントル(ウェッジマントル)でのその見積もりは地球内部の物質大循環を解明する上で必要不可欠であるがコンセンサスは得られていなかった。そこで島弧火山岩に含まれる鉱物の中の初生的な情報を保持するメルト包有物についての硫黄の化学形態(酸化還元状態に応じて敏感に変化)を放射光施設SPring-8で分析し、ウェッジマントルの酸化還元状態を見積もった。その結果、ウェッジマントルは酸化的であることを明らかにした。今後、沈み込み帯での元素濃集過程などに制約を与えられることが期待できる。
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