研究課題/領域番号 |
25610162
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鍵 裕之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70233666)
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研究分担者 |
安東 淳一 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50291480)
吉野 徹 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部材料技術グループ, 研究員 (90614545)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鏡肌 / 表面 / 鉱物 / 原子間力顕微鏡 |
研究概要 |
本年度は鏡肌試料の原子間力顕微鏡観察の技法を確立し、鏡肌試料のナノメーターオーダーの表面構造を再現性良く観察することができるようになった。天然試料の観察と並行して、方解石の摩擦実験を行い、回収試料の表面観察を行った。 天然の鏡肌試料の微細組織観察によって、以下のことが明らかになった。1) 鏡肌は原岩と同様の化学組成を持つ厚さ数十 nmの薄層である。2) この薄層は長径が数十 nmの偏平な粒子から構成される。3) 断層運動による変形集中帯に鏡肌が形成されている。 再現実験では、天然のものと同様の微細組織を持つ鏡肌を得ることができた。このことは天然の鏡肌形成の素過程が再現できたことを示している。摩擦実験からの回収試料を原子間力顕微鏡で観察し、以下のことが明らかとなった。1) 鏡肌はすべり変位・垂直荷重が大きいほど良く発達する。2) 鏡肌は垂直荷重が大きいほど短いすべり変位で発達する。3) の比較的低い荷重での実験では鏡肌の形成に伴い摩擦係数の劇的な減少は見られないが、高い荷重下での実験では低い摩擦係数を示す。 これまでの観察で、鏡肌の形成に先立ち、断層面上の凹凸が剪断を受けて粉末状物質が形成され、その上に鏡肌が形成されていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は鏡肌試料の原子間力顕微鏡観察の技術を確立することができた。研究は順調に進み、天然試料に加えて摩擦実験で得られた試料についてもナノ構造を観察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は室内実験をさらに進め、鏡肌の表面構造を支配するパラメーターを明らかにする予定である。得られたデータから、断層運動における鏡肌の生成環境を推定ですることが目標となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は原子間力顕微鏡観察に、大幅な装置改良などが必要であることを想定して研究を開始したが、大規模な装置改良を行うことなく鏡肌の表面構造を観察することができることがわかった。そのため、初年度の支出は計画よりも低く抑えることができた。 前年度に引き続き、原子間力顕微鏡の周辺機器とカンチレバーなどの定常的な消耗品の購入、フィールド調査などに研究費を使用する計画である。特に新設の実験室に装置を移設するため、これを機に原子間力顕微鏡に関連した周辺機器(顕微鏡照明、モニター画面、実体顕微鏡など)の購入も進める予定である。
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