研究課題
挑戦的萌芽研究
これまでの多くの研究から、アミノ酸とその前駆体が、さまざまな宇宙環境や原始地球環境などに普遍的に存在することが明らかになっている。生命の起原に達するための次のステップとして、アミノ酸が重合したペプチド・タンパク質がどのように生成してきたのか、そしてどのような機能をどのように獲得してきたのかが重要な研究課題となっている。これまでに、申請者らは、熔融尿素を触媒と溶媒とした反応系、リンゴ酸アンモニウムを溶媒とした反応系、水溶液中でのアスパラギンの縮重合系などで、前生物学的なペプチド合成が可能になることを明らかにしてきた。そこで、これらの前生物学的に生成したペプチドの機能を明らかにすることを目的に研究を進めている。その中で、リンゴ酸アンモニウムを溶媒とした反応系での生成物(プロテノイド)が水溶液中で球状構造物(プロテノイドミクロスフェア)を形成する。このプロテノイドミクロスフェア中に取り込まれたプロテノイドの分子量分布は、原料のプロテノイドの原子量分布より狭く、プロテノイドミクロスフェア形成の中で分子の選択が生じていることが明らかになった。さらに、個々のプロテノイドを取り出すことで、より選択性の高い分子選択が生じていることが期待されるので、ミクロンスケールのプロテノイドの個々の粒子を取り出す実験の準備を行った。個々のプロテノイドを取り出すためには、大き目のプロテノイドを作成する必要があるが、金属イオンの添加により2-5ミクロンのプロテノイドを作れるようになった。また、本予算で新たに導入したマイクロマニュピュレーターを用いて、5ミクロンの粒子を掴む技術を確立することが出来た。研究を進めるための要素技術の確立をほぼ達成することが出来た。次年度は、実際の分析を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
これまで標準的に作成しているミクロスフェアは、直径が1-2ミクロンと電子顕微鏡で見積もられていたが、光散乱分析などを行ったところ、0.5-1ミクロンであることがわかり、個々のミクロスフェアを取りだすには、より大きなものを作成する必要が生じた。そこで、大きなミクロスフェアの生成条件の探索を行うことになったため、当初、計画していた光学活性なメチルエチルヒダントインの合成とそれを用いたペプチド分析関連の研究には取り組めなかった。しかし、マイクロマニュピュレーションで取り扱うことのできる大きさのミクロスフェアの生成条件を見出すことができた。一方で、プロテノイドミクロスフェアをバルクで取り出した時の解析については、新たな分子量解析の結果からも分子選択が生じていることを示す結果が得られた。以上、計画で述べていたことと実施した研究内容は、多少異なるが、最終目標に向かって重要な知見が得られているので、概ね順調と判断した。
研究を進めるための要素技術の確立をほぼ達成することが出来た。昨年度、やや遅れていたペプチド分析に注力していく。まず、熔融尿素系で、光学純度の異なるイソバリンとラセミ体のアラニンなどのアルキルアミノ酸からのペプチド生成を行い、生成したペプチド中のアミノ酸の光学純度の検定を最優先に行う。次に、リンゴ酸アンモニウムの加熱熔融系で、光学純度の異なるイソバリンを加え、生成するプロテノイドからミクロスフェアを形成させ、個々のミクロスフェアを抽出し、取り込まれたアミノ酸の光学純度の検定と分子量分布の変化を調べていく。これらの成果をまとめることで、当初の目標である「宇宙環境で発現したと考えられているわずかな不斉(光学異性体比の偏り)が、現在の生物界でみられるホモキラルな世界(アミノ酸であればL-体のみからなる世界)に発展していく過程を実験的に検証」が達成できると考えている。
メチルエチルヒダントインの光学分割の実施遅れに伴い、使用する消耗品(光学異性体分離用カラム・充填材)が多少であるが計画より少なくて済んだため。使用する消耗品(試薬・光学異性体分離用カラム・充填材など)の補充に使用する。
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Trans. Jn Soc. Aeronaut. Space Sci.
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Peptide Sci.
巻: 2014 ページ: 印刷中
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