研究課題/領域番号 |
25610166
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
金子 雅紀 独立行政法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, ポストドクトラル研究員 (80633239)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 補酵素F430 / メタン生成-アーキア / 海洋堆積物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで応用されたことのない機能性分子F430の分析法を開発・実用化する事で、これまで不明であった海洋堆積物深部でのメタン生成アーキアのバイオマスや活動を定量的評価できるようにする事である。 当該年度および次年度の研究計画は、1.環境試料中のF430の定量分析法を確立する、2.培養実験や、水田土壌などを用いてF430濃度とメタン生成アーキアのバイオマスや活性の関係性を明らかにする、3.深海掘削コアへの応用を行うことであった。 1においては、水田、海洋堆積物、微生物マット、地下水など様々環境試料中からのF430の定量分析法を確立し、国際誌Analytical Chemistryに掲載された。2においては、様々な環境試料中のF430濃度が現場のメタン生成アーキアのバイオマスと相関することを示した。3においては、下北半島沖の掘削堆積物を用いて堆積物下0-2400 mにおけるF430の深度分布を明らかにした。特に、堆積物下70 mでF430の濃度が顕著に高くなる層準を見いだすことに成功し、メタン生成場とその規模の特定に成功した。また、海底下2000 m以深でのF430の検出にも成功した。これはこれまで報告されている海底下生命圏よりもさらに深部であることから、最深部の地下生命圏の検出という記録を樹立できる成果となった。これらの成果は3回の学会発表(内国際学会1回)にて研究報告を行った。 以上のように当該年度の研究計画を高い次元で達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度の研究計画は、1.環境試料中のF430の定量分析法を確立する、2.培養実験や、水田土壌などを用いてF430濃度とメタン生成アーキアのバイオマスや活性の関係性を明らかにする、3.深海掘削コアへの応用を行うことであった。1においては、主に環境試料特有の夾雑物の除去法を検討することであったが、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いた夾雑物除去法を確立することができた。2においては様々な環境試料中のF430濃度とメタン生成アーキアの推定バイオマスの比較から、F430濃度がバイオマスと相関関係にあることを明らかにした。培養実験においては現在遂行中であり、平成27年度中には成果が出る予定である。3においては、下北半島沖で採取された堆積物コア試料を用いて、堆積物下0から2400 mのF430の深度分布を明らかにし、70 m付近に重要なメタン生成場があることを定量的に明らかにした。また、これまで報告がない深度2000 m以深でのメタン菌の存在を明らかにした。以上のとおり、平成27年度で培養実験を残すのみとなり、すでに当研究課題の難関はクリアしているため、最高評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のなかで、未遂行である培養実験を次年度に行う。 まずはMethanothermobacter thermoautotrophicusを培養し、F430濃度とメタン菌バイオマスおよびメタン生成速度の関係性を明らかにする。その後、さらに数種のメタン菌や培養条件をコントロールした高度な培養実験へと移行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の計画の内、環境試料中の夾雑物除去法の開発が比較的円滑に進み、培養実験を次年度に先送りしたため、物品費の使用が少なくなった。また、当初予定していた国際学会での研究成果発表を平成27年度に延期したため、旅費の余剰が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、所属研究機関が変更になるため、それに伴い生じる研究に必要な物品の購入、培養実験消耗品の購入に充てる。
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