弱結合プラズマ中ではデバイ遮蔽により電場が遮蔽されるが,強結合プラズマ中ではデバイ遮蔽の近似は成り立たなくなり,遮蔽メカニズムとしてイオン球モデルが用いられる.このようなクーロン相互作用の遮蔽メカニズムの違いにより,弱結合プラズマ中と強結合プラズマ中ではイオンーイオン衝突等の素過程が大きく異なると考えられている.これまでに行った微弱レーザーによるドップラーレーザー誘起蛍光(LIF)計測により,弱結合と強結合の中間的な結合領域で自然広がりの数倍に及ぶ一様広がりを観測しており,イオンーイオン衝突周波数の増大を示唆する結果を得ている.しかし,LIF計測では,微弱なレーザーを用いてもプラズマの状態に与える影響を無視することが出来ず,定量的な評価が難しい状態であった.本研究は,強結合プラズマ中のイオンの拡散を直接観測することで,衝突過程の変化を明らかにすることを目的としている.そのため,プラズマを構成する全粒子の温度を制御しつつ,可視化する必要がある.実験にはカルシウム(Ca)イオンおよびストロンチウム(Sr)イオンの2種イオンからなる純イオンプラズマを用いる.平成25年度には,既存のCaイオン用レーザー冷却実験装置に,Srイオン用レーザー冷却用レーザー(422nmおよび102nm)およびSrイオン用LIF測定系を追加して冷却実験を行い,固相への相転移を画像計測した.プラズマを構成する全粒子を観測するには同位体イオン等の不純物を排除する必要があるため,平成26年度は,Ca(40)およびSr(88)を選択的に生成する光電離レーザー(423nm,461nm,375nm)を開発した.これにより,同位体選択された2種イオンからなる純イオンプラズマの生成および計測系が整備された.今後は,これらを用いたイオン拡散計測実験を,強結合領域において行う.
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