研究課題/領域番号 |
25610171
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 陽介 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20589189)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズマ / 光ポンピング / 磁気センサ |
研究概要 |
本研究では、大気圧マイクロプラズマにより生成した4He(23S1)準安定励起原子を用いた高感度光ポンピング原子磁気センサによる生体磁気計測に関する検討を目的としている。平成25年度は、光ポンピング原子磁気センサとして適した放電条件を調べるため、生成した大気圧マイクロプラズマ中の4He(23S1)準安定励起原子密度の計測や素過程の解析を行い、プラズマの内部パラメータが光ポンピング原子磁気センサの特性に与える影響について調べることを計画していた。平成25年度の研究目的に即した研究実績の概要は以下の通りである。 まず、光ポンピング原子磁気センサの生体磁気計測への応用可能性を検討するため、アルカリ金属原子を用いた光ポンピング原子磁気センサにより心磁および脳磁の計測を行った。低周波帯(0~100 Hz)ではおよそ10 fT/√Hzの感度を有する磁気センサにて心磁・脳磁を取得することができた。また、プローブ光を分割し、それぞれの光をラインセンサで検出することにより、磁気信号分布を多点同時に計測することが可能であることを示した。 4He(23S1)準安定励起原子を用いた光ポンピング原子磁気センサについては、ヘリウムの内圧を変えたセルを3種類作製し、その特性をレーザ吸収分光、発光分光により調べ、圧力や不純物の有無による放電特性の変化を確認した。 また、ヘリウムセルを光ポンピング原子磁気センサとして動作させる光学系を構築し、磁気信号計測を実施した。ヘリウムの圧力により4He(23S1)準安定励起原子密度や寿命が変化するため、センサ特性が変化することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で実施を予定していた項目については概ね実施できた。それに加え、従来のアルカリ金属原子を用いた光ポンピング原子磁気センサによって、生体磁気計測への応用可能性も検討することができた。センサの感度については従来の光ポンピング原子磁気センサに比べ悪いため、その点についてさらに改善する必要があるが、概ね計画通り進んでいると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の方針としては、前年度に得られた結果を基にして、生体磁気の多点同時計測および磁気共鳴信号の計測に向けた光ポンピングヘリウム原子磁気センサの開発を目指す。具体的には、多点計測用に放電領域を拡大した放電セルを用意し、それぞれの計測点におけるプラズマの特性を計測する。また、ポンプ光の減衰や強度の空間分布の影響を調べるため、プローブ光を複数のパスに分け、それぞれの計測点でのセンサ特性を計測し、多点計測の可能性について検討する。同時に、バイアス磁場を印加することにより、高周波帯での動作を確認することで、磁気共鳴信号計測等への応用可能性について検討をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度においては、レーザシステムをレーザチップとレーザ電流・温度コントローラの組み合わせにすることでコストを削減でき、次年度使用研究費が生じた。設置のしやすさや取り回しのしやすさによりレーザチップそのものを購入することにした。 平成26年度においては、磁場感度の大きさについて課題が残った。そのため、平成27年度の研究費は新規放電セルと高周波計測に対応する機器や、装置の磁場感度改善に向けた光学系や低ノイズ化するための素子の購入に充てる。
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