本研究では、量子光源を利用した新しい分光装置を開発することで光源由来の量子ゆらぎを取り除き、室温で1分子の光吸収スペクトル測定に挑戦する。平成27年度は、吸収顕微鏡を構築し、非蛍光分子の観察に向けて研究を行った。具体的には、開口数1.4の対物レンズを付き合わせた水平型透過顕微鏡を構築し、波長532nmのレーザーの光吸収を検出する系を構築した。光吸収検出にはバランス型フォトダイオードを使用し、ノイズを約-120dBのショットノイズリミットまで抑えることに成功した。この顕微鏡で、532nmに吸収のある非蛍光分子(ベータカロテンホモログ:C50)の希薄濃度薄膜を観察し、吸収の濃淡を捉える事ができた(2016年6月カロテノイド談話会発表予定)。また、量子光源に関しては、平成26年度に立ち上げた、サーマルノイズ成分を除去することが可能なナノ秒パルスレーザー励起の量子光源を完成させ、その評価を行った。TYPEⅡのBBO結晶を用いて、量子光を発生させ空間的に光子対のスペクトルを選択することで検出器やフィルタの損失込みで約50%の高い量子効率を実現した。今後は、上記顕微鏡と、構築した量子光源を組み合わせることでショットノイズリミットを超える低ノイズ光吸収実験に発展させて行く予定である。
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