研究課題
分子軌道が有するプラスやマイナスの符号(位相)が、分子の反応性を決定づける強力な要因の一つであることが知られてきた。本研究の目的は、電子衝突による特定の軌道からのイオン化過程やRydberg軌道への電子遷移過程において生じる干渉現象を用い、電子波動関数の位相を実験的に決定する新規手法を開発することにある。本年度は、電子衝撃イオン化断面積に現れる干渉効果より分子軌道形状の情報を抽出する解析法の確立を目指し、研究を展開した。この目的のため、六フッ化硫黄の非結合性軌道に着目し、電子運動量分光(EMS)実験より求めた干渉構造を詳細に調べた。六フッ化硫黄の5つの非結合性軌道は異なる方向を向いた複数のF 2p軌道の組み合わせにより構成され、その方向に応じた干渉構造を示す。実際、EMS実験より個々の分子軌道の形状を反映した特徴的な振動構造が得られ、我々の提案したモデルと実測値との比較から軌道の空間的な対称性を決定できることが分った。さらに、干渉構造の運動量原点での強度や振動の振幅から、分子軌道を構成する原子軌道の配向方向の揃い方や原子間軸に対する傾き角などに関する情報が得られることを明らかにしている。以上の研究に加え、干渉効果のより定量的な解析を目的に、分子振動に起因した核変位にともなう電子波動関数の歪みが干渉構造に与える影響を調べた。上記の六フッ化硫黄に加え、ジメチルエーテルについてもEMS実験を行い、分子振動による軌道毎の電子運動量分布の変化を詳細に検証した。これらの研究結果は、学術論文として発表している。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件)
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