研究課題/領域番号 |
25620012
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀尾 琢哉 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40443022)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超高速分光 / 光電子イメージング / 極短光パルス / 真空紫外 / 励起状態ダイナミクス |
研究概要 |
本研究の目的は、深紫外~真空紫外領域においてパルス幅が10 fs以下の極短光パルスを発生させ、それらを時間分解光電子イメージングに応用することで、分子の光化学反応を極限的な時間分解能で明らかにすることである。 本年度は、既存の基本波出力を用いたフィラメンテーション四光波混合により、中心波長が264,198,159,および132 nmの4つの光パルスを"同時"に発生させることに成功した。これら4つの光パルスのスペクトルを測定したところ、フーリエ変換限界に相当するパルス幅が10 fs以下であることが分かった。実際、198と159 nm、および198と132 nmの相互相関波形を、それぞれキセノンおよびクリプトンの非共鳴二光子イオン化を利用して測定したところ、両者とも18 fsという同波長域では前例の無い時間分解能を得ることに成功した。当初の計画では、平成25年度に既存のチタンサファイア増幅器の基本波パルス(25 fs)を、10 fs以下に圧縮し、その圧縮されたパルスを利用して波長変換を行う予定であったが、既に計画当初の設定目標に近く、さらに132 nmという計画当初には無かった短波長の極短パルスを得ることに成功したため、本光源を一刻も早く分光研究へ応用しようと考えた。本年度は、198および159 nmを用いた二硫化炭素分子のポンプ-プローブ光電子イメージングを行い、サブpsで進行する前期解離過程をリアルタイムに観測することに成功した。本成果は論文として公表した。また既に198および132 nmの極短光パルスによるポンプ-プローブ光電子イメージングに成功しており、132 nmのパルス特性に関して、現在論文投稿へ向けた準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極短光パルスの開発において、当初計画していた中心波長が264,198,および159 nmの波長に加え、132 nmの真空紫外光を発生させることに成功した。チタンサファイアレーザーの基本波出力より、中心波長の異なる4つの極短光パルスを深紫外および真空紫外領域で得られた点は、波長可変が困難な同波長域のパルス光源として非常に有望である。さらに本研究では、198と159 nm、および198と132 nmの組み合わせで、18 fsという極限的な時間分解能を有するポンプ-プローブ光電子分光を成功させた。極短光パルスの開発だけでなく、時間分解分光に応用できたという点で、本研究は予想以上に進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
真空紫外領域の極短光パルスは、世界中で開発競争が進められているため、132 nmの極短パルス発生についての論文取り纏めを至急行う。光源開発については、ほぼ終了したと言えるので、当初の研究計画通り、今後は本光源を使った時間分解光電子イメージングを推進し、得られた成果を投稿論文として取り纏める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初は、平成25年度に既存のチタンサファイア増幅器の基本波パルス(25 fs)を、10 fs以下に圧縮し、その圧縮されたパルスを利用して波長変換を行う予定であった。しかしながら、既存システムで計画当初の設定目標に近いスペックを得ることができ、さらに平成25年度末には、132 nmという計画当初には無かった真空紫外域の極短パルス発生に成功した。次年度使用額は、上述のパルス圧縮に使用予定であった物品費の一部であり、下記理由のために使用する。 当該助成金は、新たに発生した132 nmのパルス特性評価および分光研究のための物品費(主に光学部品)として使用する予定である。
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