研究実績の概要 |
本研究の目的は二つある。一つ目は、既存のチタンサファイア増幅器からの出力を利用し、パルス幅が10フェムト秒以下の光パルスを深紫外~真空紫外領域で発生させること、二つ目は、開発した光源を時間分解光電子イメージングに応用し、分子の光化学反応をリアルタイムに観測することである。前年度(H25)に、チタンサファイア増幅器の出力に対し、フィラメンテーション四光波混合を用いた波長変換を行うことで、中心波長が264,198, 159, および133 nmという四つのパルスを同時に得ることに成功した。実測スペクトルから、フーリエ変換限界に相当するパルス幅は10 fs以下であることが分かり、実際、198と159 nmの相互相関波形を計測したところ、18 fsであった。計画当初の10 fs以下という極限的な時間分解能には至らなかったが、既に同波長域ではこれまで前例の無い時間分解能を達成することに成功した。光源開発および超高速光電子イメージングへの応用に関する成果を、投稿論文として発表した。 本年度(H26)の前半では、当初計画になかった最短波長133nmの特性評価を重点的に行い、その成果を速報誌として発表した。後半では、本光源を利用した分光実験を推進し、198nmをポンプ光、159 nmをプローブ光に用いた二硫化炭素(CS2)の超高速光電子イメージングを行った。その結果、光解離反応における核波束運動の全貌、ならびに超高速の電子状態変化を明らかにすることができた。実験で得られた光電子運動エネルギー分布の時間発展を速度論モデルを用いて詳細に解析することで、その解離メカニズムに関して考察を行った。以上の成果を、投稿論文として公表した。 以上、本研究では、二つの深紫外光および二つの真空紫外光を同時に発生させることができる世界で唯一の光源開発に成功し、その有用性を時間分解分光により実証することできた。
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