研究課題/領域番号 |
25620017
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺嵜 亨 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60222147)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属クラスター / 銀 / 吸収スペクトル / 光解離 / 電子遷移 / 光学応答 |
研究概要 |
研究実施計画に沿って、金属クラスターの光吸収スペクトルのクラスターサイズ(構成原子数)依存性を調べ、電子の挙動の変化を捉える研究を推進した。具体的には、銀クラスター正イオンを試料とし、8~14量体の領域で光解離スペクトルを測定した。測定に先立って、目的のサイズのクラスターを効率よく生成、搬送、捕捉するために、まずクラスターイオン源の調整を行い、さらにイオンガイド・トラップに印加する交流電場の振幅と周波数を調整して、装置の稼働条件を10量体程度のクラスターの実験に最適化した。一方で、光照射後にイオントラップで1秒程度の保持時間を設け、光を吸収したクラスターの解離を確実にし、光吸収と等価な光解離スペクトルを測定した。これらのサイズにおいて電子遷移は波長300 nm付近に現れ、測定の結果、サイズの増加に伴って、スペクトル幅が少しずつ広がる傾向を捉えた。また、室温条件ではやや幅の広かったスペクトルが、100 Kまで冷却すると先鋭になる様子を捉えることができ、クラスターの冷却によって振動励起準位の占有数が減少し、より多くが基底状態に分布することが明瞭に示された。吸収断面積の見積もりからスペクトルの面積強度を計算し、振動子強度を評価した結果、これらの電子遷移には複数の電子は関与せず、分子軌道間の一電子遷移が支配的であると結論した。この結果は予想された傾向と合致し、14量体以下のサイズ領域では、電子の集団励起はまだ発現せず、分子的な描像を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀クラスターイオンの吸収スペクトル測定について、計画通りに8~14量体まで実験を進めることができた。予想通り、これらのサイズ領域では電子の集団励起はまだ見られず、分子的な描像を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って、今後、20~100量体のサイズ領域で実験を進めてゆく。そのために、大きなサイズを効率よく発生、搬送するクラスターイオン源、およびイオンガイドの調整を進めてゆく。さらに、これまで光解離法で実験を行ってきたが、これら大きなサイズでは、光を検出して吸光度を直接測定する光閉じ込め法を適用してゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に予定よりも安く納入された物品があり、若干の余剰金が発生した。 次年度の消耗品費に充てて有効に使用する。
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