研究概要 |
今年度の実績は以下の通りである。 1. 本手法で得られた嵩高いアルキル基(1,1-ビス(トリメチルシリル)-3,3-ジメチルブチル基)を持つジシリンのデータを吟味し、このジアルキルジシリンの特徴が紫外可視吸収スペクトルや、熱分解反応に現れることを見出した。また、ジアルキルジシリン遷移金属錯体の合成に成功した。以上の内容をAngewandte Chemie International Edition誌に論文として発表したところ、同誌のVery Important Paperに採択されるなど高い評価を得た。 2. 嵩高いアルキル基の自在合成法の発展として、1,1-ビス(トリアルキルシリル)エチレンとアルキルリチウム種の組み合わせを種々検討した。その結果、当初のかさ高いアルキル基(1,1-ビス(トリメチルシリル)-3,3-ジメチルブチル基)より結晶性は劣るが、より嵩高い置換基や、より溶解性に優れた置換基の開発に成功し、それらのケイ素上への導入条件についても最適化することができた。本手法の適応範囲を広げることができた。 3. 我々は以前に嵩高いアルキル基を有する1,2,2,2-テトラクロロジシランの還元反応により、トリシラアレンの合成に成功している。この合成法をより嵩高いアルキル基を持つ分子に対して適応した。すなわち、新規に開発したより嵩高いアルキル基を持つテトラクロロジシランを合成し、その還元反応を行った。その結果、新規トリシラアレンに加えて、副生成物としてジシラビニリデンの二量体を得た。現在その収率向上と構造解析を検討している。本化合物の存在はジシラビニリデンの反応系中での発生を示唆するものであるため、重要な結果と考えられる。
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