研究課題
環状アセンは構造的な興味だけでなく、ジグザグ型カーボンナノチューブの部分構造としても重要な分子である。しかし、これまで多くの科学者が合成を試みた結果、不安定で合成は困難であることが明らかとなり、その連結によるチューブ構造の形成には至っていない。本研究では、環状アセンの等価体として環状アセンキノンおよびその部分飽和体を合成し、その連結による環状構造よびチューブ構造の構築を検討することとした。構成ユニットとして2,3,9,10-四置換のペンタセンキノン誘導体に着目した。この位置を官能基化すれば連結により環状構造を得られると期待されるため、各種置換基の導入を試みたところ、ヒドロキシ基の導入に成功した。しかし、このテトラヒドロキシ体のアルキル化等の官能基変換は困難であり、これを原料とした大環状構造の構築には至らなかった。また、非共有結合による環状構造形成についても検討を行った。ヒドロキシ体とホウ酸、アリールボロン酸などとの反応では構造不明の生成物を与えたのみであったが、クラウンエーテル骨格を予め導入したペンタセンキノン誘導体はイオン半径の大きなアルカリ金属イオン(カリウム、ルビジウム、セシウム)との錯形成により定量的に2:2マクロサイクル型の集積体を与えることを見いだした。ナフタレン・アントラセン骨格をもつ大環状化合物/錯体はこれまでに多く報告されてきたが、本研究のようにペンタセン等価体骨格をもつ大環状化合物の報告例は極めて少なく、本研究の成果は大環状アセン構築に向けた先駆的な例の一つとなるものである。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件)
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