研究概要 |
合成標的とするヘキサシラ[6]サーキュレンの精密な理論計算を行ったところ、その最安定構造は平面構造であることがわかった。またそのHOMO-LUMOギャップは2.58 eVと極めて小さく、当研究室で合成したトリシラスマネンのそれよりもはるかに小さいことが明らかになった。また[6]ラジアレンの隣り合う末端炭素をシリレンで架橋したトリシロールも、2.94 eVとかなり小さなHOMO-LUMOギャップをもつことがわかった。 ヘキサシラ[6]サーキュレンの前駆体となるトリシラトリンダンを、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン、マグネシウムとケイ素試薬との反応により一段階で合成することを試みたところ、反応は複雑となった。そこで、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(ジメチルシリル)ベンゼンを用いた反応を検討したところ、初めてのトリシラトリンダンの合成に成功した。 トリシラトリンダンの結晶化には至らなかったものの、これとモリブデンヘキサカルボニルとの反応を検討したところ、トリシラトリンダンの中心のベンゼン環にモリブデンが配位した錯体の単離に成功し、その構造をX線構造解析で明らかにした。ケイ素架橋部分はいずれもモリブデン側に折れ曲がっていることから、それぞれのベンジル位にある二つの水素は立体的にかなり異なった環境にあると考えられる。従って、そのリチオ化はかなり立体選択的に進行するものと予想される。
|