研究課題/領域番号 |
25620025
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原野 幸治 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70451515)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 結晶成長 / 超分子化学 / 有機結晶 / 結晶多形 / ナノ材料 |
研究概要 |
結晶構造は固体状態における物質の性質を支配する重要因子であるにもかかわらず,結晶化現象を分子レベルで 理解し構造を制御することは未だ困難である.本研究では,固体表面における有機半導体分子の不均一核形成過程に着目し,結晶化分子と表面との相互作用の強弱で核形成頻度を調整し結晶形態の制御を行った.有機薄膜太陽電池の設計においては,ドナーおよびアクセプターとなる有機半導体分子間の界面面積を増やすことが高性能化に直結することから,薄膜形成における相分離構造・結晶形態をナノレベルで制御することが重要である.今回,導電性の酸性ポリマーであるPEDOT:PSS薄膜の表面をグラフェン様シートで修飾することにより,ドナー材料であるベンゾポルフィリン(BP)の結晶形態を変化させ,表面積を増大させることに成功した. ITO電極に塗布したPEDOT:PSS表面上に,ベンゾポルフィリン前駆体(CP)からの塗布後熱転換によりBPを結晶化させると厚さ20-30 nmの平坦な多結晶性薄膜が得られた.一方で,PEDOT:PSS上に酸化グラフェン誘導体Ph-iGO分散液を塗布後熱還元して還元型酸化グラフェンrGOで被覆したのちBP を結晶化させたところ,50から150 nmの高さを持つナノ結晶が表面上でまばらに成長することが明らかとなった.PEDOT:PSS表面ではBPとの強い酸塩基相互作用により高い核形成頻度で密に三次元結晶化するのに対し,PEDOT:PSS表面をrGOで覆うことで表面との相互作用が抑制され,核形成頻度が減少しまばらに結晶化したものと考えられる.このBPナノ結晶薄膜の上にアクセプター分子としてC60を蒸着して形成した有機薄膜太陽電池は,rGO非存在時に比べて電流量および光電変換効率が向上したことから,ナノ結晶生成によるC60との界面面積の増大がキャリア生成の高効率化に寄与していることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面の化学デザインによって結晶の不均一核形成を制御するという目的は有機結晶のナノ結晶形態コントロールという形で達成された.
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初計画の通り有機結晶の多形制御を目標として研究を推進する.カーボンナノホーンを単分子テンプレートとして用いるアプローチに加えて,今年度明らかになった二次元表面と結晶化分子との相互作用による核形成のコントロールも発展させ,医薬創製や有機デバイスの高効率化につながる多形制御法の確立を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品購入の予定額よりも安価に購入できたことによる差分が生じた. 研究遂行を加速する為の消耗品購入費用として使用する.
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