サイズの揃った溶媒分散性の有機サブマイクロメートルサイズ粒子(SMP)はバイオマテリアルや有機デバイスに資する材料として幅広い応用可能性を持つ.既に産業応用されている高分子のSMPに対して,有機低分子からなるSMPは化合物個々の性質・機能を集合化により活用できる点で重要な物質群である.しかし,有機低分子からなるSMPは汎用的な作製技術がいまだ確立しておらず,特に疎水性の有機分子からなる分散性SMPついては一般的に分散剤の添加が必要であることに加え,形態やサイズの系統的な制御は困難とされてきた.今回我々は,数十~数百ナノメートルの直径を有する,疎水性低分子化合物からなる水分散性SMPの簡便かつ汎用的調製法を確立し,溶媒誘起熟成機構に基づく調製後サイズ制御を達成したので報告する. 水に難溶性の有機化合物を溶解したTHF溶液を水中へ速やかに注入し,その後THFを留去することで,再現性良く水分散SMPを作製することに成功した.粒子径は注入速度や溶液濃度を変えることで調製することが可能である.種々の化合物を精査した結果,フラーレン誘導体やペンタセンなど,化合物として極めて水に安定性が低い化合物ほど良好な分散液が得られることが明らかになった.興味深いことに,結晶性の高い有機化合物から調製した粒子でも,結晶にならずアモルファス状態を保ったまま水分散しており,さらには溶媒留去後もアモルファス状態が保たれたまま球形粒子として粉末が得られることが各種測定から示された.加えて,これらのSMPは狭いサイズ分布,室温で1年以上の分散安定性,熱安定性などの特長を有することも明らかとなった.さらに,いったん得られたSMPの水分散液にTHFを加えて放置する事で,時間経過と共に粒子サイズが徐々に増大することを見いだした.この現象を利用してSMPの粒子径について調製後制御することにも成功した.
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