研究課題/領域番号 |
25620027
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩澤 伸治 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40168563)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ラジカル |
研究概要 |
本研究ではアルデヒドを出発物質として用い、これに適切な遷移金属錯体触媒と酸素、あるいは過酸化水素水を作用させ生成するペルオキシヘミアセタールを鍵中間体として、アルデヒドからのアルキルラジカル種の汎用的な発生法を確立することを目的に研究を行った。種々の条件検討を行ったところ、アルデヒドに対し、触媒量のコバルト–サレン錯体を、過酸化水素存在下、アセトニトリル中、–20 ˚Cで作用させることで、脱ホルミル化の進行したヒドロペルオキシドが良好な収率で得られることを見出した。さらに、本反応は基質一般性良く進行し、様々なアルデヒドから対応するヒドロペルオキシドを良好な収率で与えることが明らかとなった。従来知られているアルデヒドの脱ホルミル化により得られる生成物はアルケンやケトンであったのに対し、本反応ではヒドロペルオキシドが得られる点で非常に興味深い反応であり、さらに本反応は、官能基許容性も広く、良好な収率で生成物を与えるため、有用なヒドロペルオキシド合成法である。続いて本反応の反応機構について知見を得るべく検討を行った。まず、最適条件下の反応をプロトン NMRにより直接観測したところ、生成物であるヒドロペルオキシドとほぼ同量のギ酸の生成が確認された。この結果は本反応が脱カルボニルではなく、脱ホルミル化を経て進行していることを強く示す結果である。続いて、脱ホルミル化の段階に関する知見を得るべく、分子内に電子不足アルケン部位を有するアルデヒドを用いて反応を行った結果、脱ホルミル化により生じたアルキルラジカルが分子内環化反応を起こした五員環化合物が主生成物として得られることが明らかになった。さらにTEMPO存在下本反応を行ったところ、生じたラジカル種がTEMPOによって捕捉された化合物を収率良く得ることができた。これらの実験結果は本反応がラジカル機構で進行していることを明確に示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた第一の目的であるアルデヒドからのラジカル生成を計画通りに達成することに成功した。この反応はラジカル種の新しい発生法として特筆すべき成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、一級アルデヒドの反応で相当量副生が認められるカルボン酸の生成を抑制することを当面の目的として反応条件や中心金属、配位子等の検討を行う。また、この反応に基づき、ヒドロペルオキシド以外の生成物を得ることができる反応、ならびに分子間でアルケンへと付加することのできる反応へと展開することをめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は予想していたより順調に最適反応条件が見つかったため、反応の一般性を拡大することが主な研究内容となった。反応基質は一般的な化合物群のアルデヒドであり、研究室にすでに存在する試薬を使うことで研究を行うことができた。また、汎用的な反応溶媒等は他の経費で購入したものを共通で用いた。また使用計画でも述べるとおり、これからの研究の展開に多めの試薬費がかかることが予想された。これらの理由により、今年度の経費は少なめに抑えた。 26年度は、新たに生成したラジカルの捕捉法をさまざまに検討する計画であり、また、用いる錯体の種類を広く探索し新たな可能性を探索する計画である。そのためには、配位子やラジカル捕捉剤の合成に必要な試薬や、各種の高価な金属錯体の購入が必要であり、それら消耗品費として計上する。
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