前年度までに触媒量のコバルトサレン錯体を、過酸化水素存在下、アセトニトリル中、ー30℃で作用させることで、脱ホルミル化の進行したヒドロペルオキシドが良好な収率で得られること、さらに、ヨウ化ナトリウム存在下で同様の反応を行うことにより、脱ホルミル化を伴いヨウ化アルキルが得られることを見出した。 今年度の研究では、本反応の反応条件の最適化を図ると共に、基質一般性の検討、ならびに本反応を利用した有用な変換反応の開発について検討を行った。その結果、基質にエーテル、エステル、アミド、環状アセタール等を含むアルデヒドや、置換形式の異なる第二級アルデヒド、さらには各種の第一級、第三級アルデヒド等を用いて、収率良く対応するヨウ化アルキルを得ることができた。また、基質としてαメトキシアルデヒド誘導体を用いて本反応条件に付すと、生成するヨウ化物が容易に加水分解されアルデヒドが生じるため、連続的に脱ホルミル化、ヨウ素化が進行することを見出した。そこでグルコースのヒドロキシ基がすべてメチル基で保護された化合物を基質として用いて反応を行ったところ、連続的に脱ホルミルが進行し、基質に対して3倍モル量のギ酸が得られることも分かった。この反応は糖誘導体から、一炭素資源であるギ酸を合成できる興味深い反応である。 さらにテトラアンミン型配位子を持つコバルト錯体を触媒として用いて、ペルオキソヘミアセタールに対して8倍モル量のテトラブチルアンモニウムブロミドを添加して反応を行うと、今まで困難であった臭素化反応が低収率ながら進行することを見出した。この反応の反応機構は現在のところ明らかとなっていないが、その解明を含め今後、触媒の配位子や、過酸化水素以外の酸化剤の検討等を行い、収率の向上を目指したいと考えている。
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