研究課題/領域番号 |
25620032
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸部 義人 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60127264)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / アクセプター / ビフルオレニリデン / インデノフルオレン |
研究概要 |
バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池の研究においては、多種多様な電子ドナー成分が開発されているのに比べてアクセプターとしてはフラーレン誘導体しか用いられておらず、エネルギー変換効率の飛躍的向上には新種のアクセプターの開発が求められている。本研究では、ビフルオレニリデン部分構造を有する新奇な拡張共役パイ電子系を基盤とする多環状芳香族化合物を合成し、それらの有機薄膜太陽電池用アクセプターとしての機能を調査することを目的としている。 まず、すでに合成したビフルオレニリデン部分構造を有する拡張パイ電子系化合物をアクセプターとし、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)をドナーとする太陽電池素子の性能評価を行ったところ、フラーレン誘導体(60PCBM)を用いた場合よりも高いエネルギー変換効率を示すことを見出した。 我々の従来のビフルオレニリデン合成に基づき、鍵中間体であるインデノフルオレンを発生させ、その[4+4]付加反応によりフルオレニリデン骨格を有する8員環化合物の合成について検討した。その結果、置換基をもたない化合物では比較的良好な収率で目的の化合物が得られたのに対し、予想に反して置換基がある化合物ではおそらく遷移状態における立体障害のため、対応する[4+4]付加物が全く得られないことが分かった。そのため、インデノフルオレン中間体を発生させる反応条件の検討に着手した。 また、関連する構造をもちアクセプターとしての機能が期待される分子であるビインデニリデン誘導体が、環状共役アセチレンのハロゲンにより誘起される二重の環化反応により選択的に合成できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに合成したビフルオレニリデン部分構造を有する拡張パイ電子系化合物をアクセプターとし、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)をドナーとする太陽電子素子の性能評価を行ったところ、フラーレン誘導体(60PCBM)を用いた場合よりも高いエネルギー変換効率を示すことを見出した。これは予想したように、環状構造に組み込まれたビインデニリデンがアクセプターとして優れた分子であることを示す結果である。 インデノフルオレン中間体を発生させ、その[4+4]付加反応によりフルオレニリデン骨格を有する8員環化合物の合成について検討したところ、無置換体では比較的良好な収率で目的の化合物が得られた。これにより次の目的分子の合成への端緒が開けた。また、さらなる発展として、ビインデニリデン骨格を持つ化合物の合成も行った。 以上を総合すると、計画通り順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
インデノフルオレン中間体の[4+4]付加反応によるフルオレニリデン型化合物の合成については、無置換体では比較的良好な収率で目的の化合物が得られたのに対し、置換基がある化合物では対応する[4+4]付加物が全く得れなかった。今後はこの問題を克服するため、インデノフルオレン中間体を発生させる反応条件の検討を行う。合成上の問題が解決された場合は、先と同様に太陽電池のアクセプターとしての性能について評価する。 環状共役アセチレンのハロゲンにより誘起される二重の環化反応により、アクセプターとしての機能が期待されるビインデニリデン誘導体が、選択的に合成できることを見出したので、今後はこの種の分子の物性や構造について詳細に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度において太陽電池用アクセプターとしての性能評価に用いた化合物の一部はすでに合成していたため、試薬等の物品費が計画よりも少なく済んだ。それに関連して予定していた実験補助のための人件費も使用しなかった。 26年度は25年度よりも計画に占める新化合物の合成の割合が多く、試薬等の化合物合成に用いる費用が多くなると予想されるため、次年度使用額はそれに充当する予定である。
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