バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池の研究においては、電子ドナー成分開発の目覚ましい発展に比べて、アクセプターとしては一部のフラーレン誘導体しか用いられておらず、エネルギー変換効率の飛躍的な向上のためには新種のアクセプターの開発がカギであるとされている。本研究では、ビフルオレニリデン部分構造を有する新奇な拡張共役パイ電子系を基盤とする多環状芳香族化合物を合成し、それらの有機薄膜太陽電池用アクセプターとしての機能を調査することを目的とした。 前年度に引き続き、我々が見出したビフルオレニリデン合成法にもとづき、鍵中間体であるインデノフルオレン誘導体を発生させ、その[4+4]付加環化によるビフルオレニリデン骨格をもつ8員環化合物の合成を検討した。その結果、予想に反してメチル基やフェニル基をもつ誘導体では、無置換体で進行した[4+4]付加環化が進行せず、わずかに中間体が酸化されたジケトンが生成することがわかった。そのため理論計算による反応機構の調査を行い、遷移状態において置換基が及ぼす立体障害について検討した。 以上のように、目的の反応が進行する場合が限られていることが明らかとなったので、全く異なる方法によりインデノフルオレン骨格をもつ8員環化合物を合成し、その基本物性の調査を行ったところ、低いLUMOレベルをもちアクセプターとして機能する可能性が示唆された。
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