研究実績の概要 |
① [Mo6X8(C3F7COO)6]2- (X = Cl, Br, I)クラスター錯体の励起三重項状態のゼロ磁場分裂: 前年度に引き続き、これらの錯体並びに参照錯体としての[Mo6Cl14]2-錯体の励起三重項状態のゼロ磁場分裂パラメータの精密測定を行った。試料錯体をポリマーマトリックス中に均一分散させる事により、分子間相互作用を最小限に抑えつつ発光スペクトル・寿命測定を3~300 Kの温度範囲で行った。また、これらの錯体のゼロ磁場分裂パラメータを[Re6S8X6]4- (X = Cl, Br, I)のデータと比較・考察を行った。その結果、ゼロ磁場分裂エネルギーが大きいクラスター錯体ほど、強発光・長寿命性を示すことが明らかになり、ゼロ磁場分裂による発光制御が可能であることが明らかになった。 ② モリブデン6核クラスターの発光制御: 一連の[Mo6I8E6]2- (E = carboxylate)クラスター錯体の発光特性に関する研究を固体状態ならびにアセトニトリル中において行った。その結果、ターミナル配位子であるcarboxylateのpKaと発光エネルギーに相関関係があること、また無輻射失活速度定数はエネルギーギャップ則に従うことを明らかにし、ターミナル配位子であるcarboxylateにより発光特性を制御可能であることを結論した。今後、これらのクラスター錯体の励起三重項状態のゼロ磁場分裂を精密測定することにより、ゼロ磁場分裂パラメータと発光性の相関を考察を行い、発光制御の指針を得る。
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