本研究では、ガラスのように低い熱伝導性と高い電子移動度を併せ持つ理想的な高効率熱電変換材料の開発を目指し、層状遷移金属カルコゲナイドに着目した結晶性の制御および物質開発を進めた。超イオン伝導を示すCuAgSe多結晶体は、ドメインを大きくすると電気抵抗が大幅に減少し、200K以下の低温で電力因子が2倍近く増大することを見いだした。また、高い移動度を示す半金属1T-MoTe2に着目し、Nb置換による正孔ドープを進めたところ、10%の置換で室温の熱電性能が大幅に向上すること(ZT~0.02)、60%程度の置換で反転中心をもたない3R-(Mo,Nb)Te2が新規相として得られることが明らかになった。
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