研究課題/領域番号 |
25620041
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮坂 等 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50332937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電荷移動錯体 / 電子ドナー・アクセプター / ドーピング / 磁性 / 伝導性 / 一次元鎖 / 中性ーイオン性転移 |
研究概要 |
本研究の目的は、「N-I転移を示すDA化合物に、反磁性且つ電子移動不活性である種W (= wedge)をDの代わりにドープした[D1-xWxA]の組成を持つ化合物では、W間のドメインはWの量に関わらず混合原子価状態をとるため、電子・磁気相関が増大する」という、今までにない全く新しい現象を実験的に証明し、磁気秩序と電気伝導性や誘電性を制御する新しい方法論として確立することである。そのため、ターゲット化合物として、1)イオン性DA鎖、2)N-I転移DA鎖、の2種の化合物を設定した。1)のイオン性DA鎖は、[Ru2]-TCNQ系で初めて単離されたフェリ磁性鎖であるが、このイオン性DA鎖に酸化還元不活性の[Rh2II,II]を合成時に混合ドープすることにより、[(Ru2)1-x(Rh2)xTCNQ]という一次元鎖をドープ量xを変えて同構造で合成することに成功した。我々の予想では、これらの化合物は、[Rh2]種で挟まれたドメイン内には、中性TCNQとアニオンTCNQが必ず1セット存在し、ドメイン内を自由に移動していることになる。もし、[Rh2]種を介して隣接のドメインと電子移動が可能であるなら、酸化還元不活性種であっても、ドープ量の増大に依存して導電性が増すはずである(キャリアーが増えるため)。実際に、酸化還元不活性の[Rh2]をドーピングした化合物について交流インピーダンス法及び直流伝導度測定法で確認したところ、予想通り、ドープ量xが増大するにつれ、抵抗が小さくなる現象が確認された。この結果は、アメリカ化学会誌JACSに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「N-I転移を示すDA化合物に、反磁性且つ電子移動不活性である種W (= wedge)をDの代わりにドープした[D1-xWxA]の組成を持つ化合物では、W間のドメインはWの量に関わらず混合原子価状態をとるため、電子・磁気相関が増大する」という全く新しい物質を(予想通り)見出すことに成功した。これは、電荷移動型の系で同様に考えることができるため、極めて面白い現象であると同時に、ドープ物質の軌道エネルギーレベルを変化できれば、より伝導性を増すことができる。当初の計画通りであるが、1年目でより新しい知見を得ることができ、次年度に繋がるという意味で計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2)のN-I転移化合物へのドーピングは、ドナー種へのドーピングとアクセプター種へのドーピングの2つの方法によって行っており、両者とも、N-I転移の温度をドープ量に応じて変化させることに成功している。この結果は磁性の変化として捉えることに成功しているが、しかし、残念ながら、ターゲット化合物が不安定であったため、単結晶の電気測定が行えていない。本系は常磁性からフェリ磁性スピン秩序へのスピン状態変化を伴うため、N-I転移を電気的な変化として捉えることができれば、磁場を外場として使用できるため、極めて面白い。今後は、安定なN-I転移化合物を得るため、鎖間挿入分子を変えるなどの分子設計を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い、未使用額が生じた。 次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額と合わせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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