研究実績の概要 |
本研究の目的は、「「N-I転移を示すDA化合物に、反磁性且つ電子移動不活性である種W (= wedge)をDの代わりにドープした[D1-xWxA]の組成を持つ化合物では、W-W間のドメインはWの量に関わらず混合原子価状態をとるため、電子・磁気相関が増大する」という、今までにない全く新しい現象を実験的に証明し、磁気秩序と電気伝導性や誘電性を制御する新しい方法論として確立すること」であり、H25年度で既に候補となる一次元鎖化合物群を見出し、ドープ量に比例したその電気伝導性の向上について報告した。H26年度では、さらに全く新しい仮説を打ち立て、その仮説を証明する物質群の開発を行った。その仮説は、「上記酸化還元不活性種がドープされたイオン性一次元鎖について、電子がWを越えることができない低温領域では、W間の電気双極子モーメントの交換は、誘電応答として感知できる」というものである。このような混合原子価の電気双極子モーメントの交換を使うことができれば、全く新しい強誘電材料やマルチフェロイック材料の開発に繋がると考えられる。そこで、イオン性一次元化合物である、[Ru2(2-MeO-4-ClPhCO2)4(BTDA-TCNQ)]2.5benzene (2-MeO-4-ClPhCO2-; = 2-methoxy-4-chlorobenzoate; BTDA-TCNQ = bis(1,2,5-thiadizolo)tetracyanoquinodimethane)に、[Rh2II,II]がドープされた化合物、二次元層状D2A型混合原子価化合物などを合成した。その結果、いくつかの候補となる物質群を得ることに成功し、今後誘電応答測定へと繋げる予定である。
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