研究課題/領域番号 |
25620043
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀毛 悟史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70552652)
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研究分担者 |
FOO MawLin 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20646765)
犬飼 宗弘 京都大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (60537124)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 配位高分子 / イオン伝導 / 能動輸送 |
研究概要 |
結晶中で一方向のみにプロトン伝導を起こす新たな化合物の合成を行うため、低次元の構造を持つ伝導性錯体結晶を設計した。いくつかトライした中でZn2+イオン、リン酸イオン、およびベンズイミダゾールからなる錯体は一次元鎖構造を有し、単結晶を用いたプロトン伝導挙動を調べると、その鎖方向にのみプロトン伝導パスを持つ低次元伝導体であることがわかった。この錯体は無加湿、120℃で10^(-2) S/cmに近い高いプロトン伝導度を示す。また構造内部には空隙を有し、内部にメタノールなどの小分子を導入することでイオン伝導を可逆的に制御できることを見出した。 このように一次元にのみプロトン伝導する錯体の合成、および外部刺激(ゲスト導入)によって伝導挙動のスイッチングを実現したが、結晶構造からは最終目標である一方向にのみ伝導する機構は作れていない。現在、配位子にホモキラルな特性を有するものを用いた一次元伝導性錯体の合成、あるいは結晶中の配位子の段階的修飾を検討しており、イオン伝導パスの傾斜の形成にチャレンジしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開始当初は全く知見のなかった低次元構造における錯体のイオン伝導体の合成指針を得たことは本研究の進展において大きく、一般的に求められる固体中の「等方的な」伝導ではなく「異方的」な伝導の設計ができるようになった。一方で結晶中で一方向にのみイオン伝導・輸送をさせるためにはイオン自体の濃度勾配や結晶構造内部の構造傾斜が必要となる。この結晶の設計においては結晶のグラフト修飾法やイオン交換など手法開拓を行っているが目的の機能を実現する構造体の構築までには至っておらず、次年度の目標となる。
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今後の研究の推進方策 |
錯体の結晶構造において対称性が低いこと、あるいはキラル空間群を有するものが目的である一方向イオン輸送のための鍵の一つと考えており、キラル配位子の導入、複数配位子の導入によってこれらの設計性向上を目指す。また結晶内部に化学修飾可能な配位子を導入し、結晶の一部から修飾を傾斜をかけて実施することにより内部のイオン拡散の活性化エネルギーを一方向にかけ、能動輸送機能を持たせることを狙う。 また同時に本当に一方向にイオンが流れているかの評価系の構築も重要である。粉末バルク試料ではその評価はできないため、単結晶の利用が必須となる。そのため小さな単結晶でも扱える伝導度測定用セルの設計を早急に進め、マニピュレーターなども利用した信頼度の高い電極作成法を開発する。そして合成によって得られた錯体結晶において異なる結晶面の伝導度評価を行い、一方向性を定量的に評価することを目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していた固体イオニクスに関連する国際学会への参加をキャンセルしたためである。 初年度に検討してきた錯体の単結晶伝導度測定セルの作成に予定以上の予算が追加で必要となったため、装置の改良費という形で計上予定である。
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