研究課題/領域番号 |
25620044
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊東 忍 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30184659)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工金属酵素 / チロシナーゼ / 二核金属酵素 / 酸化反応 / 触媒反応 |
研究概要 |
本研究では、高熱菌由来の金属結合タンパク質(TM1459)や二核銅タンパク質(ヘモシアニン、チロシナーセゼなど)の活性中心に銅イオンや鉄イオンを組み込んだ新規な人工非ヘム金属酵素の開発と触媒反応への応用をめざして研究を行った。さらに、金属置換に加え、活性中心の第1配位圏、および、第2配位圏に部位特異的変異導入 を行い、新しい触媒機能の開発をめざした。 (1) アポ型チロシナーゼ、およびその変異体の調製:コウジ菌由来のチロシナーゼ遺伝子とタグタンパク質をコ ードした遺伝子を大腸菌に組み込んだ大量発現系を構築した。精製して得られたアポ型チロシナーゼの構造について基本的なデータを収集した。 (2) 高熱菌由来の金属結合タンパク質、およびその変異体の調製:(1)の場合と同様に高熱菌由来のTM1459 タンパク質遺伝子 とタグタンパク質をコードした遺伝子を大腸菌に組み込んだ大量発現系を構築した。精製して得られたアポ型タンパク質の構造について基本的なデータを収集した。 (3) 金属再構成ホロ型タンパク質の調製:上記の実験で得られたアポ型酵素に銅イオンや鉄イオンを導入し、ホロ型酵素を調製した。得られたホロ型酵素の分光学的および磁気的特性を明らかにするとともに、各タンパク質の単結晶を作成し、X線結晶構造解析を試みた。特に再構成チロシナーゼについてはアポ型とホロ型両方の結晶構造解析に成功し、金属の取り込みメカニズムや酵素の活性化過程の詳細を明らかにすることに成功した。 (4) 上記のホロ型酵素の基本的な反応性を明らかにするため、フェノールなどの外部基質との反応について検討し、酸化活性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二核銅酵素であるチロシナーゼのアポ型およびホロ型の高分解能X線結晶構造解析に成功し、酵素活性中心への金属の取り込み過程やプロ酵素の活性化機構の詳細を明らかにする事ができた。 また、高熱菌由来の金属結合タンパク質であるTM1459および各種変異体の太陽発現系の構築に成功し、銅イオンや鉄イオンを導入した新規な人工金属酵素の調製にも成功した。さらにこれらの高分解能X線結晶構造解析にも成功し詳細な構造情報を得ることに成功した。されに、タンパク内に存在するチロシンのフェノール基や外部から加えたフェノール類の酸素化反応が進行することも見いだし、高酸化能を有する人工金属酵素の創成に成功した。 以上の様な結果は、当初予定していた計画以上の成果で有り、順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
得られた人工金属酵素の構造や分光学・磁気的特性について更に詳細に検討する。得られた成果を基に、構造と活性の相関関係を明らかにし、更なる高活性化をめざして、部位特異的変異導入を行う。それらについても構造と活性について系統的に検討を加え、実際の有機合成化学に応用可能な人工金属酸化酵素の創出を行う。めざす反応としては脂肪族化合物や芳香族化合物の直接的酸素化反応を取り上げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規な人工二核金属酵素の開発と触媒反応への応用に関する研究の途中で予想された酵素より、より高い活性を示すものが得られたことにより、さらなる実験が必要となったため。 更なる実験に必要な消耗品として使用する。
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