本研究では、超好熱菌由来の金属結合タンパク質(TM1459)や二核銅タンパク質(チロシナーゼ)の活性中心に存在する金属結合部位の第1配位圏、および、第2配位圏に部位特異的変異導入 を行い様々な変異体を調製し、新規な人工非ヘム金属酵素の開発と触媒反応への応用をめざして研究を行った。 (1)アポ型チロシナーゼ、およびその変異体を調製し、それらの結晶構造を明らかにした。得られたアポ型酵素および変異体に銅イオンを導入し、ホロ型酵素を調製し、デオキシ(還元)型、メト型、オキシ(酸化)型の結晶構造、および、分光学的および磁気的特性を明らかにした。さらに、フェノール類の酸素化反応について検討し、構造活性相関を解明するとともに、金属の取り込みメカニズムや酵素の活性化過程の詳細を明らかにすることに成功した。更に、各種誘起基質の立体選択的酸素化反応系を構築し、有機合成化学への応用をはかった。 (2)超好熱菌由来の金属結合タンパク質 TM1459、およびその変異体を調製し、Zn、Cu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、V、Ru、Osなどの様々な遷移金属を結合させた人工金属酵素の調製法を確立した。さらに、それらの結晶構造、分光学的・磁気的特性、および反応性について系統的に検討を行った。また、各種有機基質の酸化反応についても系統的に検討し、各金属と反応性の相関関係を明らかにすると共に、触媒反応への応用をはかった。さらに、金属結合部位に導入した様々なアミノ酸残基の翻訳後化学修飾による、新規な有機補欠分子の形成についても検討を行った。
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