研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き以下の項目について研究を行った。 (1)混合原子価マンガン多核錯体と光増感剤の連結による水の光酸化触媒の分子設計を目指し,多座カルボキシラト配位子(KTA)を用いたMn13~Mn17クラスターの末端部に種々のジアミン系配位子を導入し,得られた多核金属錯体について種々の分光法及びX線結晶構造解析により詳細な分析を行った。また,KTA配位子を修飾することにより様々な多座カルボキシラト配位子を新たに合成し(KTAイミド等),少数核のマンガンクラスターの合成を試みた。今後,得られたクラスターの詳細な分析を行い,光増感剤との連結により水の酸化触媒能について評価を行う予定である。(2)生体を模倣した二酸化炭素の還元触媒の開発を目指し,異種金属二核金属錯体による二酸化炭素還元触媒の分子設計について研究を行った。 ヘテロドナーSPPS型四座配位子を用い二座ホスフィン部位に配位された金属中心にNi(II), Pd(II), Pt(II)等の10族金属を,またチオラト架橋された金属にはRh(III), Ir(III)等を組み入れた一連の二核錯体を合成し,これら異種金属二核中心が捕捉するヒドリド種の性質や反応性について系統的な研究を行った。さらに,NiRh及びNiIr錯体を用いた二酸化炭素のギ酸への還元反応についても検討を行った。また,元素戦略に基づき多座ホスフィンにより支持されたCu2核ヒドリド錯体を合成し,温和な条件下での二酸化炭素のCu-H-Cuへの挿入を経由したギ酸への還元反応を見出した。これらの結果をOrganometallicsとChem. Asian J.に発表した。
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