研究課題/領域番号 |
25620047
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小江 誠司 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60290904)
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研究分担者 |
松本 崇弘 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90570987)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオミメティクス / 酵素 |
研究概要 |
ヒドロゲナーゼは、常温・常圧で水素から電子を取り出す酵素である。即ち、この酵素は燃料電池のアノード触媒と同じ機能を持つ。通常のヒドロゲナーゼは酸素に曝されると活性中心が酸化され、水素酸化活性を失う。しかし、最近、一旦酸化された活性中心を水素によって再生できる酸素耐性ヒドロゲナーゼの存在が明らかになった。酸素耐性ヒドロゲナーゼは、水素によって酸素を還元し、水を生成することで活性中心を保護している。つまり、この酵素は燃料電池のカソード触媒と同じ機能を持つ。以上のことから、ヒドロゲナーゼモデル触媒の開発は、燃料電池の電極触媒開発において非常に重要である。これらの点を踏まえて、今年度は主に下記の研究を推進した。 (1)新規ヒドロゲナーゼモデル錯体の開発 新規イリジウム錯体を用いた水素活性化システムの構築を行った(Eur. J. Inorg. Chem. 2013, 3978-3986)。本イリジウム錯体は、触媒的に水素を酸化し、水素から取り出した電子で基質を還元することが可能である。さらに、触媒サイクルの重要な還元活性種の単離と結晶化にも成功した。本モデル錯体による成果は、ヒドロゲナーゼの触媒メカニズムの解明においても非常に重要であり、今後は酵素とモデル錯体の相補的な研究が必要であると思われる。 (2)酸素耐性ヒドロゲナーゼモデル錯体による水素と酸素の活性化メカニズムの研究 上述したように、ヒドロゲナーゼは非常に興味深く、今後より注目される酵素であるが、その触媒メカニズムは不明な点が多い。本研究では、ヒドロゲナーゼモデル錯体を用いて、水素や酸素の活性化メカニズムの解明を行った(化学、2013、68、12-16、現代化学、2013、68、52-57)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」にも記載したように、本挑戦的萌芽研究では、研究成果を順調を挙げており、論文や学会発表により、本成果を逐次報告している。 初年度に報告した新規イリジウム錯体の研究では、ヒドロゲナーゼモデルの水素酸化反応において、これまでに解明されなかった還元活性種の構造を明らかにすることに成功した。 また、酸素耐性ヒドロゲナーゼモデル錯体による水素と酸素の活性化メカニズムの研究では、分子燃料電池の電極反応メカニズムの解明も行った。分子燃料電池は、分子触媒を電極触媒に用いた燃料電池のことであり、これまでにこのような報告例はない。このような新しい燃料電池についての詳細な検討は非常に重要である。 以上のことから、「おおむね順調に進展している。」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より高活性なヒドロゲナーゼモデル錯体を開発するとともに、新規ヒドロゲナーゼの探索と単離を行う。自然界の特殊環境から採取したヒドロゲナーゼは、これまで知られていない原理や機能を有している可能性がある。通常のヒドロゲナーゼは、酸素と熱に対して不安定で、わずかな酸素や熱で失活してしまうため、高度な専門的知識と技術が無い限り取り扱いが困難であると考えられていた。しかし、自然界では、過酷な環境におかれた菌体は、その環境で生育する必要性に応じて、酵素に耐熱性や耐酸素性の機能を持たせる進化を遂げる。自然界には未だ解明されていない原理や摂理が多く残っており、新規ヒドロゲナーゼを探索・採掘し、分析する。
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