研究実績の概要 |
本研究により、金属ナノギャップで引き起こされる光化学反応の開拓に関して一定の成果を得た。金属ナノ粒子を用いて、エポキシ樹脂の重合反応に関して検討を行ったところ、通常重合反応が進行する400nmよりも短い波長の光である480nmの光で重合反応が引き起こされることを発見した。反応量の波長、光強度、温度、照射時間依存性に関する測定を行い化反応メカニズムの解明を行ったところ、反応する分子の分子軌道がAuナノ粒子に吸着することで変調し、反応のしきい波長が長波長側にシフトしたことが明らかとなった。 単分子接合の光化学反応に関しては、Pt電極を用いて、cis-1,2-DCE分子接合の光化学反応の検討を行った。光照射前には1G0付近の幅広い領域に伝導度成分が観測された。IETS計測を行ったところ、50meV付近にcis-1,2-DCE分子由来の振動モードを観測し、実際にcis-1,2-DCE分子が吸着していることを確認した。続いて、cis-1,2-DCE雰囲気下のPt接合に可視・紫外光(200nm~)を90分間照射したところ、光照射前とは異なり、1G0の伝導度を持つ構造が選択的に形成されることが示された。光照射後にもIETS計測を行ったところ、25~75meVの広い領域に振動モードが観測され、光照射前とは異なる挙動を示した。光照射前後において伝導度およびIETSが異なることから接合に吸着した分子が光によって反応することが示唆され、ナノ接合で引き起こされる光化学反応の観測に成功した。
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