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2013 年度 実施状況報告書

光誘起表面レリーフ形成機構の根本的な解明への挑戦

研究課題

研究課題/領域番号 25620062
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関大分大学

研究代表者

守山 雅也  大分大学, 工学部, 准教授 (90334317)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード表面レリーフ / フォトクロミズム / アモルファス / 薄膜 / ナフタセンキノン
研究概要

本研究は,フォトクロミズムという可逆的な光化学反応を起こす化合物の,非常に薄いガラス固体(結晶ではない固体,アモルファス,非晶)膜にパターン露光することで,その薄膜表面に凹凸構造(表面レリーフグレーティング:SRG)が形成されることに関するものである.このSRG形成には,光を当てるだけで物質が自発的に移動する過程が含まれており,なぜ物質が移動するか,という根本的な機構の解明を目指している.
まず,ガラス固体状態をとり,光にのみ反応するフォトクロミックナフタセンキノンのデンドリマー(樹状型分子)を高純度で合成することに成功した.このフォトクロミックナフタセンキノン化合物の数百ナノメートル~1マイクロメートル程度の厚さのアモルファス固体薄膜をガラスまたは石英基板上に作製し,5マイクロメートル間隔のライン&スペースのフォトマスクを介して紫外光をパターン照射することでSRGを形成させることができた.今回,SRGの形成速度やレリーフ深さ(凹凸の深さ)が基板の温度によって変化することを明らかにし,これまでに報告例がほとんどない数日間かけてのSRG形成(遅いSRG形成)にも成功した.また,SRG形成が膜の厚さに影響される可能性があること,今回の薄膜では紫外光照射部から未照射部への物質移動により起こっていることも分かった.
紫外光照射前後でのナフタセンキノンデンドリマーの融点およびガラス転移温度を示差走査熱量測定により調べた結果,両者に違いがあることも分かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

まず,計画通りにガラス薄膜を形成可能な光にのみ反応するフォトクロミックナフタセンキノンの合成に成功した.一方で,SRG形成機構解明に不純物の影響をなくすために比較的高純度の生成物を得ることに努めたが,精製作業が意外に困難を極めた.よって,世代の異なるデンドリマーや末端アルキル鎖の異なるデンドリマーなど,複数種類の高純度ナフタセンキノンデンドリマーを年度末までに得ることはできたが,本格的なSRG形成の検討はまだ1種類の化合物でしか行えていない.また,ジアリールエテン化合物の合成も行えていない.
大量合成できたナフタセンキノンデンドリマーについては,光照射前後での熱物性の測定,SRG形成における光強度,時間,基板温度や膜厚の影響等については検討できた.その結果,あまり報告のない遅いSRG形成を確認した.これはSRG形成過程を詳細に追跡できることを示している.また,物質移動の方向も確認することができた.しかしながら,表面張力の測定や原子間力顕微鏡による膜の硬さの評価を試みたが,考察できる結果はまだ得られていない.
最後に,ナフタセンキノン誘導体の単結晶の作製も試みているが,SRG形成を検討できるほどの単結晶はまだ得られていない.

今後の研究の推進方策

25年度に準備できた世代の異なるデンドリマーと末端アルキル鎖の異なるデンドリマーに関しても本格的なSRG形成の検討,光照射前後での熱物性評価等の検討を行う.ナフタセンキノン以外の化合物としてまず,光でのみ反応するジアリールエテン化合物を考えていたが,SRG研究に頻繁に使用されるアゾベンゼン化合物の検討に変更する.基板温度を低くすることでアゾベンゼンの熱戻り反応を抑制し,膜の硬さも室温よりかたい状況を作り出して検討する予定である.そうすることで,ナフタセンキノンと同様に遅いSRG形成が起こるものと予想され,アゾベンゼン系も含むSRG形成機構の統一的見解を導き出せるとの着想に至ったためである.一方,考察を深めるために,ジアリールエテン化合物と新しいナフタセンキノン誘導体の合成も同時に行う予定である.初年度に結果の出なかった,単結晶の作製および薄膜の硬さの評価を引き続き行う.また,当初の予定通り,形成機構の理論的考察とマクロモデルの構築,ナノ粒子や物質添加を利用した光反応によらないSRG形成を試みる.

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] フォトクロミックナフタセンキノンデンドリマー薄膜の光誘起表面レリーフ形成

    • 著者名/発表者名
      植島智美, 河野尚洋, 内田裕也, 永野修作, 関隆広, 守山雅也
    • 学会等名
      第62回高分子討論会
    • 発表場所
      金沢大学角間キャンパス
  • [学会発表] ナフタセンキノンオリゴマーのフォトクロミズム

    • 著者名/発表者名
      秦隼人, 阿部康成, 植島智美, 河野尚洋, 内田裕也, 守山雅也
    • 学会等名
      日本化学会第94春季年会
    • 発表場所
      名古屋大学東山キャンパス

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公開日: 2015-05-28  

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