研究課題/領域番号 |
25620064
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
鳥海 幸四郎 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (90124221)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薄膜結晶 / 結晶作製 / 金属錯体化学 / エピタキシャル成長 |
研究概要 |
本研究では、気相からの結晶成長が困難と思われる金属錯体結晶(電荷を持ち蒸気圧が低く熱的に不安定)を対象として、溶液からのエピタキシャル結晶成長法を利用して薄膜単結晶の作製を試みた。 本研究では、エピタキシャル結晶作製にすでに成功している、ハロゲン架橋一次元白金(II,IV)混合原子価錯体を研究対象とした。有機配位子としてシクロヘキサンジアミンを用い、臭素架橋白金(II,IV)混合原子価錯体(1)を基板結晶として、塩素架橋白金(II,IV)混合原子価錯体(2)を膜結晶とした場合、良質なエピタキシャル薄膜結晶の作製にすでに成功している。基板結晶として(2)を用い、薄膜結晶として基板結晶(2)とは異なるエチレンジアミン配位子を用いた塩素架橋白金(II,IV)混合原子価錯体(3)および臭素架橋白金(II,IV)混合原子価錯体(4)を用いて、エピタキシャル成長を試みた。この結果、膜結晶として臭素架橋錯体(4)を用いた場合、(4)の青色の薄膜結晶が基板結晶表面上に島状に厚さ約0.5ミクロンほどに成長していることが確認された。偏光顕微鏡による直交ニコル観察から、島状結晶の配向はそろっており、また基板結晶とも配向が一致することが確認できた。基板結晶(2)と膜結晶(4)の結晶構造を比較すると、空間群はI222とIcmaと異なり、格子定数も2倍ほど異なる。これらのことより、結晶構造が異なる(2)と(4)についても、エピタキシュル成長することが強く示唆された。一方、基板結晶(2)と膜結晶(3)のエピタキシャル成長には成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機配位子が異なり結晶構造も異なるハロゲン架橋白金(II,IV)混合原子価錯体を基板結晶と薄膜結晶に用いた場合について、基板結晶表面上に島状の薄膜結晶の作製に成功した。膜結晶と基板結晶の方位が一致することが確認され、基板結晶上にエピタキシャル成長していることが確認できた。これは26年度に計画していたことであり、予定以上の成果である。しかし、架橋ハロゲンが基板結晶と膜結晶で異なる場合、目的とするエピタキシャル結晶が得られていない。膜結晶作製において、配位子交換反応が起こっていることが考えられ、溶液法によるエピタキシャル成長に関して重要な知見が得られた。一方、基板結晶表面の化学処理とエピタキシャル成長との関係については、十分な検討がまだ行えていない。また、膜結晶の構造の同定等に関して、検討課題がはっきりして来た。以上の通り、本研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1、25年度に作製に成功したと推測している、シクロヘキサン配位子を含む臭素架橋白金(II,IV)混合原子価錯体を基板結晶としてエチレンジアミン配位子を含む臭素架橋白金(II,IV)混合原子価錯体を膜結晶としたエピタキシャル薄膜結晶について、実際に予想される結晶構造を持つ薄膜単結晶が得られているか、表面X線回折実験や顕微赤外分光測定などを行って、結晶構造の決定を試みる。 2、25年度の実験ではエピタキシャル結晶の作製に成功していない、膜結晶としてエチレンジアミン配位子を用いた塩素架橋白金(II,IV)混合原子価錯体を用いた場合について、短時間で膜結晶を作製するなどの方法を利用して、再度エピタキシャル結晶の作製を検討する。溶液からのエピタキシャル成長の障害となる、イオン交換等の溶液内平衡反応を抑制する方法を検討する。 3、目的とする化合物が基板結晶上にエピタキシャル成長するか判別する方法として、目的化合物の溶液を基板結晶上にコートし、溶媒を真空蒸発させて結晶化させることが考えられる。単結晶薄膜の作成は難しいが、エピタキシャル成長が可能であれば、方向がそろった単結晶粒が基板結晶表面に成長することが予想される。エピタキシャル成長の可否を判定する有効な手段として、その可能性を探る。 4、d10金属を含む多核金属錯体は、発光性錯体として知られ、また四核錯体と六核錯体の間で溶液内平衡を持つことが明らかになっている。基板結晶および薄膜結晶の発光色から薄膜結晶がエピタキシャル成長しているか判断できるとともに、膜結晶の構造を推測することができる。また、基板結晶を選択することにより膜結晶の構造を制御できる可能性があり、興味深い研究対象と考えられ、エピタキシャル薄膜結晶の作製を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の本研究に関係した実験等に用いたガラス器具の修理を、26年に入ってからガラス器具修理業者に依頼を出した。しかしながら、4月から消費税が上がる等の経済状況のため、ガラス修理業者に大量の修理依頼がすでにあり、私の修理依頼に対応する時間的な余裕が全くないとの回答を得た。このため、ガラス器具の修理に予定していた科研費の予算が余ってしまった。 真空ライン等のガラス器具の修理は本研究をスムーズに遂行するためには是非とも実行する必要があり、この費用として未使用の予算を今年度に使う予定である。
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