研究実績の概要 |
本研究では、気相からの結晶成長が困難な金属錯体(電荷を持ち蒸気圧が低く熱的に不安定)である、ハロゲン架橋一次元白金(II,IV)混合原子価錯体および発光性多核銅(I)、銀(I)錯体を対象として、溶液からのエピタキシャル結晶成長法を利用して、基板結晶上に薄膜単結晶を作製した。 同じシクロヘキサンジアミン配位子を用いた臭素架橋白金(II,IV)錯体(1)を基板結晶、塩素架橋白金(II,IV)錯体(2)を膜結晶として水溶液からのエピタキシャル成長により薄膜単結晶の作製にすでに成功している。本研究では、エチレンジアミン配位子を含む臭素架橋白金(II,IV)錯体(3)を薄膜結晶試料として、金色の基板結晶(1)表面へのエピタキシャル成長を試みた。この結果、ゆっくりエピタキシャル成長させることにより緑色の厚さ約0.05ミクロンの薄膜単結晶(3)の作製に成功した。 発光性多核金属錯体については、置換基の異なるピリジンチオール配位子を含むが同形の銅(I)錯体と銀(I)錯体をそれぞれ基板結晶と膜結晶として溶液からのエピタキシャル成長を行った。膜結晶のクロロホルム溶液中に溶解度の小さい基板結晶を入れ、ダイヤフラムポンプを使って12℃で5~7日かけて減圧濃縮を行い、基板結晶表面への膜結晶のエピタキシャル成長に成功した。紫外光を照射して試料を顕微鏡観察したところ、赤色発光する銅(I)錯体の基板結晶表面に、黄緑色発光する銀(I)錯体の複数の微小単結晶が方向をそろえて付着しているのが分かった。X線回折法によりエピタキシャル成長面の面指数を決定したところ三方晶系の(10-11)面であることが分かった。これより、既知の結晶構造を考慮すると、結晶界面では金属錯体の有機配位子部分が重なる方向で結晶成長していると考えられる。
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