研究概要 |
本研究の目的は偏光によって不斉富化が起こる反応基質を磁性体内部に包接させ、強磁性転移温度以下で常光を照射することにより物理的・化学的不斉源を用いない絶対不斉合成を実現することである。本年度の目標はアミノ酸等の光反応(分解)可能な基質を包接した磁性体を合成し、その構造を明らかにすることである。合成として、7種のアミノ酸{L-Asp, D-Asp, DL-Asp, L-Glu, D-Glu, L-Ser, L-(+)-ArgHCl}、4種の遷移金属塩{Cu(NO3)2, Ni(NO3)2, Co(NO3)2, Mn(NO3)2}を用いて水熱合成を行い、5種の化合物を単結晶として得、単結晶構造解析によりそれぞれ構造を決定することができた。またこれら5種の結晶についてSQUID磁束計を用いた磁気測定を行った。 得られた単結晶DL-Asp_Cu(II),L-Asp_Cu(II), D-Asp_Cu(II),はいずれも1次元鎖状構造、L-Glu_Cu(II), L-Glu_Cu(II)は3次元網目状構造を形成していることがX線結晶構造解析より示された。磁気測定の結果DL-Asp_Cu(II)は1.8 Kまでに転移はみられず、D-Asp_Cu(II)は反強磁性体であった。ほぼ同じ一次元鎖状構造を有するにもかかわらず磁気挙動が異なるのは鎖間の再近接部位の違いによるものと考えられる。その他得られた結晶についても、今後磁気測定を行う予定である。
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