研究課題/領域番号 |
25620065
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
秋田 素子 城西大学, 理学部, 教授 (30370125)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 絶対不斉合成 / アミノ酸 / ポルフィリン / 水熱合成 / ペロブスカイト構造 / 分子性磁性体 / 包接体結晶 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は変更によって不斉富化が起こる反応基質を磁性体内部に包接させ、強磁性転移温度以下で常光を照射することにより、物理的・化学的不斉源を用いない絶対不斉合成を実現することである。 本年度の目標は昨年度合成し結晶構造を決定した、アミノ酸等の光反応(分解)可能な基質を包接した磁性体の磁気測定を行うことである。昨年度得られた結晶5種のうち4種は1.8 Kまでに転移はみられず、1種は反強磁性体であった。そのため新たな磁性体を合成するため種々のアミノ酸と遷移金属硝酸塩を用いた水熱合成を継続して行った。 水熱合成法では種々のアミノ酸・遷移金属を用いることができ、反応条件により様々な磁性体が得られるのが利点であるが、反面得られた錯体の結晶構造や磁性の予測は難しい。そこで本年度は新たに層状有機-無機複合ペロブスカイト型化合物に着目し、反応基質を包接した磁性体の調製を試みた。有機-無機複合ペロブスカイト型化合物は(R-NH3)2MX2の組成であり、金属ハロゲン化物が形成する層間に有機アミンが挿入された構造をもつ。磁性は金属ハロゲン化物が形成する二次元シート層が担う。そこで反応基質としてアミンを導入した有機-無機複合ペロブスカイト型化合物を合成することとし、本年度アニリン誘導体と塩化銅の組み合わせから4種の結晶を得た。そのうち3種についてX線結晶構造解析を行ったところ、目的のペロブスカイト構造をもつことが分かり,SQUID磁束計による磁気測定の結果、いずれも転移温度8 Kの強磁性体であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標はアミノ酸等の光反応(分解)可能な基質を包接した強磁性体を合成し、その結晶構造と磁気構造を明らかにすることである。本年度は昨年度得られた5種の磁性体の磁気測定を終了した。残念ながら強磁性体ではなかったが、本年度新たに合成した3種の化合物は目的とする強磁性体であり、その結晶構造も明らかにすることができた。以上のことから本課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
反応基質として有機アミンを含む強磁性体の調製方法を確立することが出来たことから、今後様々な有機アミンを含む強磁性体の合成を行い、結晶および磁気構造を決定する。現在の強磁性転移温度は8 Kであるが、各種光学測定・光反応を行うには転移温度は少なくとも10 K以上が好ましいことから、転移温度の向上を目指す。以上を平行して行い、光反応基質を含む転移温度10 K以上の強磁性体を合成し、得られた場合には転移温度以下での常光による光反応を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的化合物の合成に水熱合成を用いる予定であり、本年度水熱合成容器の作成を外注する予定であったが、目的化合物の合成法に変更があり外注を取りやめたため。 来年度以降に行う磁気測定、光反応は申請者所属機関で所有する装置では不可能であるため、共同利用または共同研究を予定しているがそのために施設利用料、旅費が必要となるため。
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次年度使用額の使用計画 |
光反応装置の購入または共同研究受け入れ先への旅費及び施設使用料として用いる。 新たに合成する化合物のための有機及び無機試薬の購入に用いる。
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