研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究は異種分子を一層ずつ交互に積み重ねた「分子超格子」の創製技術を確立することを目的にしている。そのためまず走査型トンネル顕微鏡(STM)によるリアルタイム観察で界面形成過程を解き明かし、そこから単一分子レベルで平坦なヘテロ界面をもった分子超格子へと発展させる。このため独自に開発した精密蒸着技術をSTM解析と分子積層の双方に適用する。この手法は1時間で1分子層という超低速蒸着ができるため、STMでの界面形成のリアルタイム観察や一層ずつの分子膜の成長が可能となる。これらにより超格子構造を有機半導体で実現し、電荷の励起・分離・再結合などのキャリアプロセスの超高効率化や分子による量子効果の発現を目指す。初年度はSTMでのリアルタイム解析に注力した。p型半導体としてペンタセンを、n型半導体としてフッ素化フタロシアニンを選択し、これら二種類の分子を交互に蒸着しながら、その場でSTM観察して界面形成の様子を直接観察した。実験開始当初はこれら分子の単一層が積み重なった二層構造が形成されると予想した。しかし第一層目をフタロシアニン、二層目をペンタセンとした場合にはこれらの分子が相互拡散して等量混合した混晶相を形成することがわかった。また蒸着する順番を逆にした場合にはペンタセン層の格子間にフタロシアニン分子が添加された固溶相が形成されることが見出された。いずれも両分子間に水素結合が形成されて混晶相(固溶相)を形成した方がエネルギー的に安定であるためと予想される。今後はこれら固相反応を抑制して分子単一層レベルで積層した超格子構造作製のための条件(蒸着順序や温度の最適化、反応を抑制できる混合相の積層などを含む)の探索に移行する。
2: おおむね順調に進展している
直接観察には成功し基礎的技術の確立できた。しかし当初の予想とは異なり混晶相(固溶相)が形成されることが見出された。これは予想を超えた成果とも言えるが、分子間相互作用および基板-分子相互作用が複雑に関与していることを示唆しており、超格子構造を作製するために多くの条件最適化実験が必要であることがわかった。
今後は固相反応が抑制できて、なおかつ分子単一層レベルで積層した超格子構造を作製できる条件最適化に注力する。このため蒸着時の基板温度の最適化、蒸着する分子層の順序の最適化、反応を抑制できる混合相の積層などをの探索に移行する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
ACS Nano
巻: 7 ページ: 6914-6920
10.1021/nn4020888
http://www.nims.go.jp/kyushu/en/labo/wakayama/index.html